Parkinson病の新しい治療戦略
Roche社が Elan社の子会社 Prothenaと契約し、PRX02の開発を進めることが、2014年3月10日のNature biotechnology誌の Newsで紹介されていました。その Newsでは、他にもいくつかの薬剤が紹介されています。
Roche bets on alpha-synuclein for Parkinson’s
α-synucleinは、Parkinson病の多くやレヴィー小体病の原因と推測されているタンパク質です。α-synucleinが勝手に重合して蓄積することが、疾患にとって重要な役割を果たすと考えられています。PRX02は、α-synucleinの C末端に結合して、それを防ぐことが期待されるモノクローナル抗体です。この薬剤は、第一相臨床試験に向けて動き出しているようです。
また、AFFiRiS社も α-synucleinをターゲットとしたワクチン PD01Aを開発中です。作用機序としては、α-synucleinに似た小さなペプチドを用いることで、免疫応答を引き出すそうです。現在、第一相臨床試験が行われています。
ProteoTech社が開発する小分子 Synuclereは、α-synucleinの重合を防ぎ、また重合した α-synucleinを重合していない形にかえることで、α-synucleinを除去することを目的としています。開発が安価で、安全で、血液脳関門を通過しやすいというメリットのある薬剤のようです。
別の戦略として、Biogen社は、Amicus Therapeutics社と組んで、リソソーム酵素 glucocerebrosidaseの活性を高める小分子を開発することを発表しました。 glucocerebrosidaseの欠損は、脳内の α-synucleinの重合を引き起こすとされています。
パーキンソン病の根本的治療薬は現在のところないので、我々は患者さんの症状を緩和する薬剤を使うしか方法がないのですが、疾患の原因物質に作用して進行を遅らせることができるような薬剤が開発されれば、これほど喜ばしいことはないですね。治療薬の開発がうまくいくことを祈っています。