炎症性腸疾患と ANCA

By , 2014年3月23日 7:43 PM

好中球細胞質抗体 (ANCA) は、顕微鏡的多発血管炎 (MPA)、Wegener肉芽腫症、アレルギー性肉芽腫性血管炎 (AGA) などで陽性となります。ANCAが陽性になる自己免疫疾患で、しばしば末梢神経障害などを引き起こすことから、我々神経内科医もよく検査を提出します。

最近、若年性脳梗塞の患者を診療したときに、ANCA関連血管炎が脳梗塞の原因になっていないか、ANCAを調べました。すると、PR3-ANCAが陽性でした。しかし、その患者にはクローン病の既往があったのです。

抗体陽性というだけで ANCA関連血管炎と短絡的に診断するわけにいかないので、炎症性腸疾患で ANCAが陽性になることがないか文献を調べると、結構たくさん報告されていました。パラパラ眺めてみると、潰瘍性大腸炎の約 50~70%, クローン病の 約 20~30%で ANCA陽性になるイメージです。別に脳梗塞の原因が見つかったこともあり、先ほどの患者さんの場合は、クローン病に伴う PR-3 ANCA上昇だったということになるのでしょうね。

ANCAが陽性になる鑑別に、炎症性腸疾患が頭から抜けていたので、よい勉強になりました。

(参考)

Diagnostic precision of anti-Saccharomyces cerevisiae antibodies and perinuclear antineutrophil cytoplasmic antibodies in inflammatory bowel disease.

Meta-analysisの結果、MPO-ANCAの潰瘍性大腸炎における感度/特異度は、55.3%, 88.5%だった。

Presence of anti-proteinase 3 antineutrophil cytoplasmic antibodies (anti-PR3 ANCA) as serologic markers ininflammatory bowel disease.

PR-3 ANCAの潰瘍性大腸炎における 感度/特異度は、52.1%, 97.3%であった。クローン病より潰瘍性大腸炎の方が有意に陽性率が高い。

The diagnostic accuracy of serologic markers in children with IBD: the West Virginia experience.

MPO-ANCAの感度/特異度は、潰瘍性大腸炎で 73/84%, クローン病で 16/35%だった。

Antineutrophil cytoplasmic antibodies (ANCAs) in patients with inflammatory bowel disease show no correlation with proteinase 3, lactoferrin, myeloperoxidase, elastase, cathepsin G and lysozyme: a Singapore study.

ANCAの陽性率は、潰瘍性大腸炎 50%, クローン病 30%だった。

Prospective evaluation of neutrophil autoantibodies in 500 consecutive patients with inflammatory bowel disease.

潰瘍性大腸炎の 66.3%, クローン病の 11.9%で MPO-ANCA陽性であった。

Antineutrophil cytoplasm autoantibodies against bactericidal/permeability-increasing protein in inflammatory bowel disease.

潰瘍性大腸炎の 60%, クローン病の 28%, 細菌性腸炎の 23%で ANCA陽性だった。

Inflammatory bowel disease serology in Asia and the West.

炎症性腸疾患における ANCAの陽性率には、人種差なさそう。

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