薬事法違反の疑いがあるインターネットサイト
ネットを巡回していると、医師の処方が必要な薬剤を販売している業者を多く見かけます。
医学的な適応や危険性を認識しないまま素人が購入するのは危険性があるし、そもそも成分が正しい用量入っている保証もありません。
これまでは野放し状態でしたが、厚生労働省が重い腰を上げたようです。メール等で簡単に情報を寄せられるようになっています。
薬事法違反の疑いがあるインターネットサイトの情報をお寄せください(動物用医薬品を除く)
ネットを巡回していると、医師の処方が必要な薬剤を販売している業者を多く見かけます。
医学的な適応や危険性を認識しないまま素人が購入するのは危険性があるし、そもそも成分が正しい用量入っている保証もありません。
これまでは野放し状態でしたが、厚生労働省が重い腰を上げたようです。メール等で簡単に情報を寄せられるようになっています。
薬事法違反の疑いがあるインターネットサイトの情報をお寄せください(動物用医薬品を除く)
病院を受診して「脳卒中じゃない」と言われた患者さんが、自分の症状を動画撮影して見せたら脳卒中だと診断された事例がニュースになっています。
自分の脳卒中動画を晒す女性が現れる
動画を見ると一目瞭然ですね。
そういえば、私が昔秋田県で当直をしているとき、「頭に虫がいる」という主訴で救急外来を受診した患者さんがいました。受診時には頭に虫はいなくて刺し口だけありましたが、スマホで虫が刺している写真が撮られており、すぐにツツガムシとわかりました。ツツガムシ病に対する抗菌薬予防投与が妥当か判断は分かれるところですが、念のためミノサイクリンを飲んで頂きました。
患者さんが自分で撮ってくる画像って、結構役に立つものですね。不随意運動や意識消失などの診療をするときにも、症状があるときの動画があると助かります。
小保方騒動は、小保方氏側のボロがどんどん出てきて悲惨なことになっています。
Nature誌に 2本同時掲載だったとか、華のある女性研究者だったとか、当初の理研の広報が凄かったなどの理由で騒ぎは盛り上がっていますが、とはいっても基本的には数多くある論文不正の中の一つです。
最近、BioMedサーカス.comに、次のような文章が載りました。
第23回:もてない男の僻みほど格好悪いものはない(副題:STAP捏造が世界三大捏造だというのは『まやかし』だ)
教授「だがな、STAP騒動なんかよりも、俺はノバルティスの捏造の方がずっと問題だと思うぞ」 (略)
教授「あれは酷い。製薬会社の社員が臨床研究に関わっていて、しかもデータを操作して自社の薬の優位性をでっち上げたんだ。で、そのデータを論文にして、その論文を使って販促活動をしたんだぞ。これがどれだけ危険なことか、君にはわかるかね?」(略)
教授「ま、わからんだろうな。この事件よりもSTAP騒動が大きく報道されているというのは信じられないね。さっきも言ったが、STAP問題は、アホがアホなことをしただけで、基本的には関係者以外には大した影響はない。ま、アホなマスコミがお祭り騒ぎをしたから、多少なりとも影響を受けた人の人数は増えただろうがね。だが、ノバルティスの問題は、医薬品ならびに医薬品業界を根底からひっくり返すものだよ。医薬品なんてのは、ヒトの生き死ににダイレクトに関わるからね。これはもう大変なことだよ」
まさにその通りで、小保方騒動より扱いは小さいですが、こっちの方がよほど大きな問題だと思います。CASE-Jなどの問題も出てきていますが、これらは徹底的に膿を出す必要があります。
ということで、STAP細胞についてこれ以上あまり騒ぐ気はないのですが、更に理研から驚くべき問題が明るみに出ました。
理研、誤ったマウスを提供 41機関、研究に支障も
朝日新聞デジタル 6月22日(日)5時30分配信
理化学研究所が国内外の研究機関の注文に応じて実験用マウスを提供している事業で、誤ったマウスが繰り返し提供されていたことがわかった。41機関に注文とは異なる計178匹の遺伝子組み換えマウスが提供され、なかには実験データが使えず、研究に支障が出たケースもあった。
正しい遺伝子組み換えマウスの提供は、iPS細胞などの再生医療研究を支える基盤となっており、ミスは研究の信頼性を損なう事態につながりかねない。
誤ったマウスを提供していたのは、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)。約6900種類の組み換えマウスを管理・販売する国内最大の実験用マウス提供機関だ。センターは多様な組み換えマウスを開発者から預かって管理。研究機関はセンターが管理するマウスのカタログから実験に適したマウスを選び、繁殖用の種マウスとして数匹購入し、繁殖させて実験に用いる。
多くの研究者にとって、これは小保方騒動以上のインパクトだと思います。誤ったマウスを掴まされて実験を繰り返していたとすれば、研究者達にとって死活問題です (※実際にはマウスの genotypingは必ずするので、目的部位の遺伝子変異有無を間違えたまま実験を続けることはありません。しかし、①目的部位に遺伝子変異のないマウスを掴まされた場合、必要なマウスを再度調達しないといけないので実験が遅れる、②目的以外の部位に遺伝子変異が挿入されたマウスだった場合、変異があることに気づかない可能性がある、ことは事実です)。この問題がどう発展していくか、注視しています。
「あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ! ―シンプルに伝える魔法のテクニック (渡部欣忍著, 南江堂)」を読み終えました。
学会発表の時、予演会などで「スライドは 10行まで」と口を酸っぱくして指摘されて育ってきたので、それなりにスライドはシンプルに作っているつもりでした。
しかし、この本を読んで目から鱗でした。ここまで見やすいスライドが作れるとは思いませんでした。
おかげで講演予定のスライドを全部作り直す羽目になりましたが、この本を読む前よりは圧倒的に文字が減ったし、インパクトを与えるものになったと思います。
学会などプレゼンする機会のある多くの方に読んで頂きたい本です。
2014年6月9日の JAMA neurologyに、興味深い論文が掲載されていました。
Autoimmune Aquaporin-4 Myopathy in Neuromyelitis Optica Spectrum
抗AQP4抗体陽性の視神経脊髄炎関連疾患 (NMO spectrum disorder; NMOSD) の患者で CK (Creatine Kinase) 上昇が見られ、筋生検をしてみたら、”autoimmune AQP4 myopathy” だったという論文です。筋生検では、筋壊死が見られなかったにも関わらず、CKが 63000 U/L以上の高値だったことについて、sarcolemmal membraneの破綻のために CKが血中に出て行きやすかったためではないかと考察されています。
抗AQP4抗体って、myopathyまでも起こしうるんですね。びっくりしました。
一つ残念だったのが、針筋電図の記載です。論文では “Electromyographic findings were consistent with myopathy” としか書かれていませんでした。病理で壊死がないと書いてあるので、いわゆる “non-necrotizing myopathy” として脱神経電位は出なかったのではないかと推測するのですが、実際どうだったかは記載して欲しかったです。
今後、NMOや NMOSDの患者の採血を評価する場合には、CKも測定項目に含めておくべきかなと思いました。この論文の症例は、おそらく非常に稀なパターンではあるでしょうけれども。
私は 2008年9月からブラウザは Google chromeを使っています。動作が軽いですし、非常に気に入ってます。。
さて、その Google chromeは、拡張機能が充実していて、他のブラウザ同様、ブラウザを使いやすくカスタマイズできます。例えば、”Webpage Screenshot” という拡張機能 を使えば、ブラウザで読み込んだページのスナップショットをワンクリックで撮ることができます。こうした拡張機能のインストールは一瞬で終わります。
今日、偶然「アシスタント医学文献」という拡張機能を見つけました。
アシスタント医学文献
この拡張機能は、pubmedで論文を調べた時、雑誌の impact factorや論文 pdfへの直リンクを表示してくれます。使ってみると、とても使い勝手が良いです。ブラウザが Google chromeの方は、是非使ってみてください。
先日の神経学会総会で無料配布されていた「緑の天啓 SMON研究の思い出 (井上尚英著, 海鳥社)」を読み終えました。
SMON (Subacute Myelo-Optico-Neuropathy) は、キノホルム製剤により、亜急性に脊髄、視神経、末梢神経の障害や消化器症状が出現する疾患です。昭和 30~40年代に問題となった、我が国最大級の薬害でした。原因が薬の副作用だったにもかかわらず、それがわかるのに長い年月を必要としました。私は本書を読むまでは、「通常、薬剤内服歴はチェックするはずなのに、なぜそれがわからなかったのか」と疑問に思っていましたが、実はそれにはいくつも理由があったようです。
・薬剤を内服してから症状が出るまで、数週間のタイムラグがあった。
・量依存的に症状が出現するため、少量であれば飲んでも影響がなかった。「飲んでいても大丈夫」な患者がいたため、疑いにくかっった。
・キノホルムを含む整腸剤に副作用はなく無害だと思われていた (海外では投与量が制限されていたが、日本の説明書ではそこが省かれていた。安全だと信じこんで大量投与を行う医師がいて、その地域に患者が集中した事情があったらしい)。
・キノホルムを含有する薬剤は複数あり、単一の商品ではなかった。そのため商品名だけチェックしてもわかりにくかった。
・キノホルムが胃腸炎などで消化器症状を呈した患者に対する治療薬として使われため、内服後に副作用で消化器症状が出たとしても、もともとの病気の症状と判断されてしまった。
原因不明と思われた SMONは、日本中の神経内科医らがしのぎを削って研究し、最後はあっけなく原因が同定されました。研究の過程で登場するのは、豊倉先生、高須先生、黒岩先生、椿先生、井形先生など、そうそうたる神経内科医たちです。まさに叡智を結集してと言って良いです。
この薬害から改めて思うことは、「クスリはリスク」ということです。副作用のない薬はないと考え、必要ない薬は使わない、使うとしても用量をきちんと検討することが重要ですね。
本書を読みながら、薬害に苦しんだ患者や、良かれと思ってキノホルムを処方して薬害を作ってしまった医師たちの心中を考え、心が痛みました。
SMONの原因が同定されてから数十年が経ちます。私を含め、今の若い医師たちはあまりこの問題を知らないと思います。風化させてはいけないと思いますので、是非多くの方にこの本を読んで頂きたいです。
ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2014に参加してきました。ハズレの講演が一つもなく、非常に有意義な時間を過ごすことが出来ました。
5月31日10:00~11:30 第1会場 「最新論文30選:忙しいあなたの ために」 平岡 栄治
<循環器・医学教育アップデート>
院内心静止:VSEで神経予後良好 (Good: デザイン, ADL自立生存, ROSC, 全患者フォロー, 低体温治療 24%) (Bad: ギリシャ 3施設で少ない, ACLS 2005使用, VSEに慣れた施設, 院内 (院外は?), 同意は蘇生後, 組成前入院期間 2日 vs. 5日)
NOACはワルファリンに比べての脳卒中、特に脳内出血の頻度を優位に減少させる。NOACはワルファリンに比べて死亡率、頭蓋内出血の頻度を減少させるが消化管出血の頻度を増加させる。低用量 (Dabigatran, Edoxaban) 群においては安全性が高まり死亡率の改善も高用量群同様維持される。(Good: 計 71683人と多い, 脳卒中・脳塞栓症減少, 死亡率低下 by 10%, INR治療域 >66%) (Bad: コスト約 10倍/月, エドキサバンは Afに未認可, 消化管出血増加, 新規抗凝固薬の直接比較不可)
③Spironolactone for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
スピロノラクトンは心収縮能が維持されている心不全患者の心血管事故およびその既往、心不全入院の複合アウトカムを減少させないが心不全入院は減少させる。(Good: 多国間他施設?, BNP↑では利益, 心不全入院↓, フォロー期間十分, 重篤有害事象~), (Bad: BNP↑ or 過去一年間に心不全入院が対象, 心不全入院既往は本当に HFpEF? 再入院が少ない, 1/3で中断)
④2014 Evidence-Based Guideline for the Management of High Blood Pressure in Adults
60歳以上の血圧ゴール 150/90以下, 60歳以下の拡張期血圧ゴール 90以下, 60歳以下の収縮期血圧ゴール 140以下,慢性腎不全患者の血圧ゴール 140/90以下, 糖尿病患者の血圧ゴール 140/90以下, 黒人以外の患者における降圧剤は CCB/Thiazide/ACE-I/ARBいずれかを選択する, 黒人患者には糖尿病患者を含め CCB/Thiazideを使用する, 慢性腎不全患者には人種をとわず ACE-I, ARBのいずれかが第一選択薬である, 血圧コントロール不良ならば現行の治療薬を増量するか他剤を追加する。(Good: IOMガイドライン基準, Do no harmの精神, エビデンスレベル明確, 利益背反があれば投票できない, 血圧がどのくらいで薬物療法開始, 降圧目標どのくらい, 降圧薬の優劣) (Bad: RCTのみで Meta解析なし, 低質の研究無視, 血圧正常研究除外, 狭い範囲 (推奨 9個のみ), 公のレビュー不十分, シニア筆者が離脱)
⑤Next Accreditation System (NAS)
米国においては教育のシステムを進化させるべく New accreditation systemを開始ししている。より実社会のニーズに則したものをアウトカムとしている。本邦においても教育システムの構築が必要である。(Good: 教育機関の教育能力の質の保証, 患者中心・研修医主役, ACGME-Iに注目, アウトカムに基づく教育) (Bad: 研修医 1人に$280の費用, 日本でどのように活用?)
<呼吸器・集中治療・周術期>
COPD急性増悪患者における副腎皮質ステロイド全身投与患者は、5日間と 14日間で、6ヶ月間の急性増悪再発率に差を認めなかった。(Good: GOLD2013ガイドラインでは 10~14日→治療を変える, ステロイド用量 65%減少も, 比較的重症患者, 非劣性試験) (Bad: 肺炎患者除外, 全患者で抗菌薬, 28%は感染症あり)
⑦Oral Apixaban for the Treatment of Acute Venous Thromboembolism
急性静脈血栓塞栓症の治療において、固定用量のアピキサバン単独のレジメンは、従来の治療法に対して非劣性で、出血率が有意に少なかった。(Good: 非劣性試験, 有症状の近位 DVTか PE, ダブルプラセボ, 再発/関連死減少, 重大な出血少ない, 活用すれば入院減らせる) (Bad: 死亡率有意差なし, 日本未認可の薬剤, 75歳より高齢だと大出血増加, 脳出血増加)
⑧ Fibrinolysis for Patients with Intermediate-Risk Pulmonary Embolism
中等度リスクの肺塞栓症症患者において、血栓溶解療法は血行動態破綻を予防するが、重篤な出血と脳卒中リスクを増加させた。→中等症の肺塞栓に血栓溶解療法を解説者は推奨しない。血圧低下時のレスキュー血栓溶解療法で十分。
⑨Prone Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome
早期の腹臥位療法は、重症 ADRS患者の 28日, 90日死亡率を低下させる。(Good: 死亡率低下, 安定期 12~24時間改善患者除外, 1日>16時間, 低1回換気量と PEEP (ARDS net), 離脱プロトコール, 発症<36時間, 酸素化↑) (Bad: 腹臥位に超慣れている施設, 抜管少ない (慣れている施設のため), ARDSの少数派)
⑩A Randomized Trial of Protocol-Based Care for Early Septic Shock
プロトコールに基づく蘇生は、敗血症ショックを呈する救急患者の生存アウトカムを改善しなかった。さらに、筆頭著者 Riversはカテーテルの特許を持っていたが利益背反の記載なし、Edwards Lifescience社より $404000+α, プリセップカテーテルが高い、対照群の死亡率が高過ぎる (46.5%), 288名→263となっており 25名はどこに?、単施設→ARISE研究/ProMISe研究 (Good: 多施設研究, Surviving Sepsis Campaignガイドラインに反論, 3時間以内に抗菌薬 76%, 早期診断・治療) (Bad: 輸液量、重症度、死亡率)
<消化器・老年医学>
⑪Transfusion Strategies for Acute Upper Gastrointestinal Bleeding
急性期上部消化管出血では、輸血閾値を Hb 7以下にした方が、Hb 9以下にするより 45日後の全死亡率・再出血率・合併症率を改善する。(ただし、除外基準に大量出血や 90日以内の急性冠症候群があるので、そういう患者には適応できない)
プラセボと比較して COX2阻害薬は心血管イベント・上部消化管イベント・心不全での入院率・死亡率を増加させる。NSAIDsは心血管と上部消化管イベント・心不全での入院率を増加させるが、ナプロキセンだけは心血管イベントを増加させない可能性がある。低用量でもこの結果が適用されるかは不明である。→ナプロキセンは心血管イベントリスクの点からは最も安全、消化管出血リスクが高い症例には Coxib or ジクロフェナクがまだまし
高齢者に対する PPIの長期投与は再入院率は増加させなかったが、死亡率の増加に関与している可能性が示された。高齢者に PPIを長期投与する際はそのメリット・デメリットをよく考慮し、投与中であれば中止可能か常に検討すべきである。→PPI一般論として肺炎のリスクや C.difficile腸炎のリスク、長期投与で骨粗しょう症のリスクを高め、今回の論文では 1年後の死亡率すら高める可能性がある。
PLACIDE studyでは probioticsの AADに対する予防効果は証明されなかった。CDDについても有意差なしであったが、AADの 60%にしか CDDの検査がされておらず、発症率も平均より低いため、probioticsの効果なしとは評価しづらい。PLACIDE studyは研究デザインの整った probioticsでは過去最大の多施設 RCTであり、この結果は無視できない。現時点では probioticsの使用についてはそのメリットやコストなどを考慮し個別化して対応すべきである。
⑮Glucose Levels and Risk of Dementia
糖尿病のありなしにかかわらず、高血糖は認知症のリスク因子である可能性が示された。糖尿病患者においても平均血糖 160に比し平均血糖 190ではハザード比 1.4で認知症発症のリスクが上昇する。これは高齢の糖尿病患者においても血糖コントロールの必要性を示唆している。
<腎・内分泌>
⑯Combined Angiotensin Inhibition for the Treatment of Diabetic Nephropathy
蛋白尿を伴う糖尿病性腎症に対して ACE阻害薬と ARBの併用は有害。Limitationとして、退役軍人を対象としており、99%が男性である。→JNC8の推奨でも ACE-Iと ARBを併用してはいけないと記載あり。併用している患者がいたら中止を推奨。
⑰Blood Pressure and Mortality in U.S. Veterans With Chronic Kidney Disease: A Cohort Study
CKD患者で最適な血圧は 130-159/70-89 mmHgの組み合わせ。下げ過ぎには注意。Limitationとして後ろ向きコホート、退役軍人医療機関での研究、99%男性、9割白人。
高齢者の CKD患者でも、透析により長生きする。ただし、80歳以上/併存症増加/performance status低下のいずれか該当で透析のメリットはなくなる。透析導入の選択は慎重に。
ASCVDあり→高用量スタチン、LDL-C≧190→高用量スタチン、 糖尿病/ASCVD 10年リスク≧7.5%→高用量スタチン、糖尿病/ASCVD 10年リスク<7.5%→中等量スタチン。ストロングスタチンは LDL-C値を約 50%以上低下、中等度スタチンは LDL-C値を約 30~50%低下。数値目標はない。
⑳Repeat Bone Mineral Density Screening and Prediction of Hip and Major Osteoporotic Fracture
BMD測定は一回で十分。一回目の骨密度測定 (BMD) で薬物療法の適応でない患者では、4年後に BMDを行っても方針はほとんど変わらない。骨粗しょう症マネジメントでは、栄養指導 (カルシウム摂取)、禁煙指導、不必要な PPIの中止、荷重のかかる運動など。
<血液・腫瘍・膠原病>
マンモグラフィーは乳癌による死亡率を減らさない。マンモグラフィーは小さな癌を見つけるが、424人に 1人は over-diagnosis (一生顕在化しない)。スイス医学会では、マンモグラムを新たに導入しないように勧告している。
末期癌患者への生食 1 L輸液は脱水症状、QOL, 生存期間いずれも改善しない。
トラスツズマブ・エムタンシンは、トラスツズマブ+ドセタキセルに比べて、無増悪生存期間、安全性が勝る。
㉔Therapies for Active Rheumatoid Arthritis after Methotrexate Failure
関節リウマチ MTXでコントロール不良例では、Triple Tx (MTX+スルファサラジン+ヒドロキシクロロキン) はエタネルセプト+MTXに非劣性である。
㉕Efficacy of Remission-Induction Regimens for ANCA-Associated Vasculitis
重症 ANCA関連血管炎に対してリツキサンは寛解導入、寛解維持療法とも従来の免疫抑制剤 (シクロホスファミド 2 mg/kgで寛解導入→アザチオプリン 2 mg/kgで維持) に対して非劣性であった。
<神経内科・感染症>
脳梗塞急性期の積極的降圧は死亡や身体障害の改善に寄与しなかった。
㉗Endovascular Therapy after Intravenous t-PA versus t-PA Alone for Stroke
血管内治療追加は t-PAと比較し予後を改善しなかった。ただし、有意差はないが、NIHSS>20以上だと血管内治療を追加した方が mRS 0-2 (自立した生活) の割合が高い可能性がある。今回の研究では、先行研究より血管内治療の開始が 32分遅れていることが関与している可能性がある。
㉘Clopidogrel with Aspirin in Acute Minor Stroke or Transient Ischemic Attack
対象患者は高リスク TIA (ABCSD2 >4点), Minor stroke (NIHSS score ≦3点), 感覚障害のみ/視野障害のみ/めまいのみ/MRI正常を除外。介入群:初日クロピドグレル 300 mg+アスピリン 75~300 mg, 2~21日クロピドグレル 75 mg+アスピリン 75 mg, 22~90 日 クロピドグレル 75 mg, コントロール群:初日アスピリン 75~300 mg, 2~90日アスピリン 75 mgとしたところ、介入群で脳卒中再発は減少したが、出血性イベントは増えなかった。ただし、すべての脳梗塞患者には一般化できない。また、先行研究の結果から、長期にわたって 2剤を併用すべきではない。
インフルエンザワクチン接種と心血管イベントの低下には関連性がある。特に活動性の心血管疾患を持つ高リスク患者には強い治療効果がみられる。ただし、この研究では primary endpointが複合エンドポイントであり、エンドポイントで 1次2次予防が混合している。ちなみに、AHA/ACCF冠動脈疾患 2次予防ガイドラインでは、心血管疾患がある人は毎年インフルエンザワクチンを接種することを推奨している (Class I)。安定虚血性心疾患患者に対して PCIをしても生命予後改善は示されておらず、短期間心筋梗塞を増加させる可能性があり、長期経過において急性心筋梗塞を減少させないが、インフルエンザワクチンは心血管死、心筋梗塞を減少させる。
HCAPでも層別化すると 50%程度が CAPとして治療しうる
この講演では、最新論文が 30本紹介されました。しかし、ただ紹介されたのではなく、論文が PICOで示され、批判的吟味もなされていました。非常に勉強になりました。
5月31日11:40-12:40 第3会場 「風邪の診かた」 岸田 直樹
岸田先生が書かれた「 誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた」という本に沿った内容でした。本自体は読んだことがありましたが、トークが絶妙で、会場が何度も笑いに包まれていました。
5月31日13:00-14:30 第5会場 「誰も教えてくれなかった診断学・中級編」~複雑な症例に挑戦する~ 野口 善令
large B cell lymhomaの骨病変に伴う高 Ca血症のケースが、診断名を伏せて示され、グループでディスカッションをして診断をしていくプロセスを学習しました。
野口先生の講演が終わってから、ポスター発表を見て、ホテルで休んでから赤垣屋に出かけ、演者の先生らと数名で食事をしました。非常に有意義な意見交換が出来ました。
6月1日10:10-11:40 第2会場 「Snapdiagnosis ver. 2」 須藤 博
身体所見は手から (British style)。
<手>
自身の爪の伸びる長さを William B. Beanが数十年に渡り調べている。32歳 0.123 mm/day, 61歳 0.100 mm/day, 67歳 0.095 mm/day
1. Terry’s nail: 肝硬変, 2型糖尿病, 慢性心不全, 慢性腎不全, 加齢
2. Mee’s Line: 重症の全身性疾患, ヒ素中毒
3. Beau’s Line: 1本だけなら外傷の既往を考える (棒線と覚える)
4. Muehcke Line (BMJ, 1956): 重症の低アルブミン血症
5. 手の皮疹: PHSと覚える。P=掌蹠膿疱症, H=手足口病, S=梅毒。ほかに Osler結節, 多形滲出性紅斑など。
6. 手の腫脹: RS3PE症候群, 早期の関節リウマチ, リウマチ性多発筋痛症 (PMR) 遠位型
7. Achenbach症候群: 急に指がズキッと傷んだ→血腫形成。明らかな誘因なし。治療適応なし。
<頸動脈>
8. 頸動脈怒張: CVP推定, 右心系の血行動態の推定。座位で鎖骨上に頸静脈の拍動が見えたら、中心静脈圧の上昇を意味する (例外=心タンポナーデ, 上大静脈症候群, 緊張性気胸)。仰臥位で全く見えなかったら、静脈系の虚脱を意味する (例外=太った人)。(その他、CVPの推定についての動画あり)
9. 傍胸骨拍動: 右室圧の上昇を意味する。
10. 心尖拍動: 鎖骨中線より外側や直径が 500円玉より大きいときは心拡大を示唆する。鎖骨中線より外側のときは EFも低下している。
<喉>
11. 亜急性甲状腺炎: 喉の痛い場所が移動する。赤沈高値が特徴。頸部に紙を置くと汗で貼り付く。頸部正中で心音を聴取することがある。
12. Hypothyroidism: Hypothyroid speechは 構音障害と間違えられることがある。Yellow palm, ATR弛緩相の遅延。
<腹部>
臍の直下には大動脈分岐部がある。臍の位置は剣状突起と恥骨結合の中点±1cm, 腹水や肝腫大で下方に移動する。
13. 腹部下半分の腫脹: 卵巣腫瘍, 妊娠, 尿閉
14. 簡単な尿閉の見方: 恥骨結合の上に聴診器を置いて、頭側から打診すると急に音が大きくなる場所がある。それが聴診器から 8 cm以上頭側にあれば尿閉。
15. 「持続的」な腹痛: 血管性の痛み, 膵炎, 胆石発作, 腹膜炎, 腎結石 (急性水腎症では、立ち上がるときに腎が引っ張られ疼痛でることもある), 小腸アニサキス
16. 虫垂炎: 個々の症状よりも、症状の順番が大事 (=march of events)。Pain→Anorexia→Tenderness→Fever→Leukocytosis
17. 腹膜炎: 頼みもしないのに膝を曲げている。
<その他>
18. PMR: 起き上がるとき疼痛のため特徴的な姿勢をとる。呼びかけても頚部痛ですぐに振り向かない。「全ての両側性の疾患は片側から始まる (ティアニー)」
19. PMRと思ったけれど実は・・・:環軸関節偽痛風 (Crowned dens syndrome: コップの水が飲めない, 首が回らない, 目薬させない→NSAIDs著効), Occult breast cancerの骨転移, 咽後膿瘍, ペースメーカーリード感染
20. Marcus Gunn pupil: swinging light test
21. 伝染性紅斑: 成人では net-like lace, 浮腫・関節炎症状。パルボウイルスを見たら、必ず SLEを考える。SLEを見たらパルボウイルスを考える。高齢者の全身痛は PMR, 30~40歳の全身痛は伝染性紅斑を考える。
22: けいれん: 頭部回旋, 舌の咬傷, 尿失禁・・・
23. 指導医へのオススメ論文: The clinical approach to the patient
24: 身体所見のオススメ本: 身体診察のアートとサイエンス
2013年の時と共通する内容がいくつかあり、良い復習になりました。また、新しく勉強になったことがいくつもありました。
6月1日12:45-13:45 第6会場 Meet the expert 「医学古書のすすめ」 清田 雅智
清田先生とは 2013年の ACP日本支部年次総会の時、一緒に飲みに行って意気投合し、私のことを覚えていてくださいました。今回は Sister Mary Joseph’s noduleの歴史について、1時間語られました。Sister Mary Joseph’s nodule (Pants-button umbilicus) は、腫瘍の臍転移を示す所見ですが、その命名に紆余曲折があったようです。講演のあと、私から清田先生に「神経学の原著」シリーズの論文コピーを御渡ししました。
6月1日14:00-15:30 第2会場 「Unsuspected killer in ED! alive or dead」 林 寛之
1. Walk inの 0.2~0.7%が重症疾患である
2. 心筋梗塞は診断が難しく、訴訟になることが最も多い
3. 下壁梗塞では迷走神経症状として、消化器症状がみられる
4. 心筋梗塞を示唆する症状として冷汗は LR+ 4.6, 放散痛は LR 7.1 (右側に多いらしい)。ニトロや制酸薬が効くかどうかはあてにならない。胸痛パターンでは除外できない。
5. 冷汗は心筋梗塞, 低血糖, 有機リン中毒で見られる
6. 痛みのない心筋梗塞が 22~35%を占める
7. 心筋梗塞では、受診後 10分位内に心電図, First Medical Consultから 120分位内に心カテを目標とする。そのため、ナースの権限で心電図を取れるように院内の規定を整える必要がある。
8. 心筋梗塞に対する心電図の感度は 13~69%とされている。3~4時間後に再検することで 96%つかまえることができる。8~12時間後に follow up ECGならほぼ必ずつかまる。
9. 心筋梗塞に対する心筋逸脱酵素の感度 50%, 特異度 85%とされている。発症 1時間以内だと感度 10~45%だが、8時間以上で感度 90%以上になる。発症の時間をチェックしておくことが大事。
10. 心筋梗塞に対する心臓超音波検査の感度は 93%, 特異度は 66%である。心電図などの情報をみてから検査しないとわかりにくい。
11. 心筋梗塞の 6~52%は非典型的。女性では急性冠症候群の 43%に胸痛がない (女性の胸ばかり見ていてはいけない)。女性では、嘔気・嘔吐、息切れ (58%), 倦怠感 (53%)、放散痛を訴えることが多い。85歳以上で最も多い症状は息切れ。
12. Vancouver chest pain ruleはあるが、感度 100%ではない。
13. Wellens syndromeは、左冠動脈の虚血を示唆し、心電図で前胸部誘導で 2相性 T波または陰性 T波がみられる。放置すると 75%が数週間以内に心筋梗塞を発症する。左室肥大があるときは異常とはとらない。
14. 新規出現の左脚ブロックのみでは慌てなくてもよい。例外は、ショック、心不全、Sgarbossa criteriaを満たすとき。
15. 心電図で giant negative Tは中枢性疾患を示唆する。クモ膜下出血などの検索。
16. くも膜下出血について。Ottawa SAH ruleなど。
私自身、心筋梗塞についての知識は最近アップデートされていなかったので、非常に勉強になりました。救急当直をしている医師にとって、このような知識はとても価値があります。また、林先生はプレゼンテーションが上手で、スライドの作り方を含む、講演の技術という面でも勉強になりました。
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(参考)
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