国立新美術館 の「オルセー美術館展 」を見に行ってきました。
今回の目玉は、マネの「笛を吹く少年」。展示会場は、次のように区画分けされていました。
1. マネ、新しい絵画
2. レアリスムの諸相
3. 歴史画
4. 裸体
5. 印象派の風景 田園にて/水辺にて
6. 静物
7. 肖像
8. 近代生活
9. 円熟期のマネ
一番気に入ったのは、ミレーの「晩鐘」でした。他には、カイユボットの「床に鉋をかける人々」、モット「べリュスの婚約者」、ブグロー「ダンテとウェルギリウス」、ルフェーヴル「真理」、モネ「かささぎ」、モネ「死の床のカミーユ」などが印象に残りました。
10月20日まで開催されているので、興味のある方は是非行ってみてください。
(追記)
2014年7月23/30日号の JAMAに Pablo Picassoの絵 “Woman With Child” が紹介されています。ちょうどその号の Thema Issueが HIV/AIDSであり、女性および子供への治療戦略を扱っているので紹介したようです。この絵は、彼の Blue Period最初の作品なのだそうです。
心房細動のある患者の脳梗塞予防には、以前はワーファリンが使用されていました。というか、内服での抗凝固療法では、他に選択肢がありませんでした。しかし、採血で INRを測定しながら用量調節する必要があり、薬剤相互作用や食品の影響を受けるなど使いにくく、効きすぎて出血したり、効かなさすぎて脳梗塞を発症したりということもよく見かけました。 そこで登場したのが、新規抗凝固薬 (NOACs) です。用量調節が簡単で、薬剤相互作用や食品の影響を受けにくい、効果発現が速い、やめると速やかに効果が切れる、ワルファリンと効果がほぼ同等で出血性合併症が少ない、などの理由で急速に普及しました。その先陣を切った薬剤が dabigatran, 商品名プラザキサです。その後、rivaroxaban (イグザレルト)、apixaban (エリキュース) が発売されました。腎障害、高齢、低体重などで出血性合併症のリスクが高くはなるものの、その点を留意して選択すれば、ワルファリンに比べて圧倒的に使いやすい薬剤です。
NOACsは市場が大きいため、製薬会社による販売活動が非常な盛んな分野です。少しでも他社製品に差をつけようと、各社しのぎを削っています。そんな中、2014年7月23日の British Medical Journal (BMJ) に衝撃的な特集記事が組まれました。
①Dabigatran: how the drug company withheld important analyses
②Concerns over data in key dabigatran trial
③Dabigatran, bleeding, and the regulators
④The trouble with dabigatran
BMJの言い分は、「もし採血で薬剤の血漿レベルを監視して使用することにしていれば、もっと出血性合併症を減らせたのに、製薬会社がその事実を隠していた (dabigatranの血中濃度が 200 ng/mlを超えると危険らしい)」というものです。Boehringer社は、「ワルファリンと違って採血不要」を宣伝文句にしていました。販売戦略のために、副作用を軽減しうる投与法を隠していた可能性が指摘されています。また、pahse IIIの RE-LY試験 が open labelだったことが、バイアスにつながっている可能性にも触れられていました。
個人的な使用経験や臨床試験の結果を見た感じでは、dabigatranをこれまでどおり使用しても、少なくともワルファリンより効果や安全性が劣ることはないとは思います。しかし、最善の使用法が製薬会社により意図的に隠されていたことで、dabigatranのイメージダウンは免れません。
少数例ではあっても rivaroxabanで間質性肺炎 が問題になっていること (ただし稀)、AHA/ASAによる stroke guideline で示された evidence level、今回の BMJの特集記事から、NOACsの中では apixabanが選ばれやすくなっているのかもしれません。
医学史関係の書籍を読むのがマイブームとなり、月 10万円を超える医学書代に頭を悩ませているみぐのすけです。
調べ物をしている最中に、偶然 Open Library という凄いサイトを見つけてしまいました。
Open Libraryの Author Searchというスペースに著者名を入れると、普通では手に入らないような古書達を無料で読むことができます。そればかりでなく、PDFでダウンロードもできます。
実際に、Hippocratesや、Thomas Willis, Morgagniといった医学者、Babinskiや Parkinson, Charcotといった神経学者らによる、膨大な書籍が手に入ることを確認しました。
しばらくは、これで相当楽しめそうです。いくつかダウンロードした本を読んでみた感想ですが、1600年代の英語の本は少し読みにくい (“s” のフォントが “f” に酷似している, “n’t” という省略形が多いなど) のですが、1800年代の本は割と抵抗なく読むことができます。時代を感じます。
ヴァイオリニストの成田達輝さんが出光音楽賞を受賞しました。受賞者ガラコンサートおよび授賞式に招待してくださったので、行ってきました。
第24回出光音楽賞 受賞者ガラコンサート
挾間美帆 (作曲・編曲・ピアノ): Suite “Space in Senses” より「Pentagram」「Interlude」「Puzzle」
-休憩-
小林美樹 (ヴァイオリン):コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35 全楽章
成田達輝 (ヴァイオリン):シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47より第 1楽章, 第 3楽章
2014年7月10日 (木) 午後 6時 45分開演
東京オペラシティーコンサートホール
その日は、私はさいたまで講演でした。17時30分から約束の 1時間きっかり喋って、18時30分に会場を出ようと思ったら、まさかの質問攻め。10分ほど足止めを食らうはめになりました。会場に着いたのは、19時40分くらいで、ちょうど 1曲目が終わった休憩時間でした。せっかく御招待頂いたのに演奏が聴けなかったらどうしようかとヒヤヒヤしたものですが、なんとか滑りこむことができました。
成田氏が「雪の中を鷹が飛んでいる」と解説した冒頭は、情景が目に浮かぶようでした。途中の技巧的なパッセージは、困難さを全く感じさせず、エレガントでした。最も印象に残ったのは、一楽章のカデンツァの美しさでした。うっとりと聴き入りました。
演奏の素晴らしさを言葉で表現するのは難しいですが、この演奏会は 2014年9月7日午前9時から、テレビ朝日系「題名のない音楽会」で放送される予定です。是非御覧ください。
成田氏がインタビューで「尊敬する」と評していたヴァイオリニスト Kavakosの動画を Youtubeで見つけたので紹介しておきます。
・Leonidas Kavakos Sibelius violin concerto
演奏会が終わってからは、東京オペラシティ スカイバンケット フォルトナーレで開かれたレセプションに参加しました。立食パーティーで、テレビで御馴染みの池辺晋一郎氏と少し話す時間がありました。あと、某女子アナウンサーがすぐ近くにいましたが、こちらは話しかける機会はありませんでした (´・ω・`)
レセプション後に成田氏ら飲みに行く予定を立てていたものの、この日は大型の台風が近づいていたので、まっすぐ帰りました。
「実証分析入門 (森田果著, 日本評論社) 」を読み終えました。法律家向けに書かれた、因果推論や実証分析の本です。この本を読もうと思った理由は、下記のリンクにあるように、目次が面白そうだったからです。
内容はかなりに高度でしたが、目次に釣られる形で通読できました。目次だけではなく、本文や注釈もおもしろく、例えば第 9章の「きのこの山とたけのこの里と、どちらが好きですか?」というアンケートの回答を変数とした解析の脚注は、「ちなみに筆者の好みはきのこの山。たけのこの里のぼそぼそ感は許し難い」となっていて(p.95)、思わず「お前の好みはどうでも良い」とツッコミを入れてしまいました。
第12章は、「飛ばない豚はただの豚」を例に取り、「豚が飛ぶことを選ぶ (=ただの豚でなくなる) のは、どのような要因によって決まるのか」を、線形確率モデル (LPM), 非線形モデルで解析しています。そのネタだけでも十分面白いのに、さらに「なお、『飛べない豚は・・・』だと誤解している人が多いけれども、正確には『飛ばない豚は・・・』だ」と、無駄に丁寧な解説がされています (P.128)。
また第 14章、目的変数が 3択以上の解析では、Perfumeという音楽グループを例にしているのですが、「しかしたとえば、のっちは髪がショートなのに対し、あ~ちゃんとかしゆかは髪が (セミ) ロングだから、同じ票を食い合うことにより、のっちは 50%のまま、あ~ちゃんとかしゆかは 25%ずつ、という確率になることも十分現実的だ」という文章 (p.156) があり、これを見て学術書だと思う人はいないでしょう。
このように読者を引き込むために遊びの部分が多いとはいえ、学問的には極めて真面目な本です。法律家向けの本でありながら、生物統計に生きる部分もたくさんありました。例えば、統計学の基礎や、バイアス、重回帰分析、サバイバル分析、ベイジアン統計学などです。
簡単な統計学の入門書などを一冊こなしてから本書を読むと、楽しめると思います。
名指揮者 ロリン・マゼール が、2014年7月13日に 84歳で肺炎で亡くなりました。
ヴァイオリニストとしても素晴らしい演奏をしたマゼール。わずかですが、ヴァイオリン演奏の映像も残されています。艶やかな音が印象的です。
・LOREN MAAZEL ~ Mozart Violin Concerto K.216 ~ 1st. Movement
指揮者としての名声は、クラシックファンとして知らない人はいないでしょう。特に彼の指揮するブラームスは色っぽさがあって、私は大好きです。フランクフルトで彼の指揮するブラームスを聴いた のが懐かしい思い出です。
昨夜は、マゼールの DVD を聴きながら、追悼しました。ご冥福をお祈りします。
日本には、必要のない抗菌薬がたくさんある一方で、海外では当たり前に使える本当に必要な抗菌薬がなかったりします。その一つがメトロニダゾールの点滴薬です。これまではメトロニダゾールは内服薬しかありませんでした。
ちなみに、メトロニダゾールの内服薬の名前は「フラジール」と言います。飛行機で壊れ物を預けたときに貼られるテープには「fragile」と書いてあり、いつもフラジールを連想してしまうのですが、フラジールのスペルは “FLAGYL (フランス語) ” らしいです。余談です。
さて、メトロニダゾールの注射薬は「アネメトロ」という名前です。感染症診療に従事する医師たちには、武器が一つ増えました。ファイザー社、GJです。
2014年6月30日まで沖縄に行っていた話を前回しましたが、その続きです。
7月1日、肛門の左側の皮膚を触るとチクッとするのに気づきました。触った感触では虫刺されのように盛り上がっています。「沖縄で乗馬したとき、外で裸でシャワー浴びたから、そのとき刺されたのかな」と思って様子をみることにしました。
7月2,3日は、鈍痛がかなり強くなってきました。
7月4日、風呂あがりに iPhoneで写真を撮ってみると、左尻の内側に 2本線状の発赤があり、一部膨隆しています。これはただの虫さされじゃないと思って、Facebookの医者仲間に見せたら、「幼虫跛行症じゃないか」とか恐ろしい意見を頂きました。灼熱痛が強く、仕事が何も手に付かないレベルです。勤務先の皮膚科医に写真を見せたら、「ステロイドでも塗っとけば」と言われました。しかし、あまりに痛みがひどすぎるので、仕事帰りに職場近くの皮膚科クリニックを受診したら、帯状疱疹と言われました。「鑑別は単純ヘルペスだけどね」と笑われたので、「心当たりないですよ」と答えたら、「前に診た人もそう言ってましたよ」と。ちなみに単純ヘルペス 2型は性感染症なんですね。本当に心当たりはないです (´・ω・`)。
この日から、バルトレックスを開始しました。帯状疱疹急性期の疼痛は、侵害受容性疼痛 です。そのため NSAIDsを内服しました。帯状疱疹と診断がついてから考えてみれば、ちょうど S4くらいが中心で神経支配に沿っています。この領域の帯状疱疹で膀胱直腸障害を呈した症例報告 を読み、ちょっとビクビクしていました (私の皮疹の大きさは、ちょうど症例 1と症例 2の間くらいでした)。
7月5日が症状のピークで、起床時は 37.5℃の発熱があり、jolt accentuationと軽度の吐気もありました。おそらく軽い髄膜炎を起こしていて、大学病院だったら髄液検査されちゃうのでしょう。何とか 2時間くらいかけて出勤し、後輩に申し送りをして早退し、2時間くらいかけて家に着きました。7月5, 6日は自宅でゴロゴロして過ごしました。
7月7日頃には痛みが半分くらいまで和らぎ、皮疹は痂皮化してきました。7月12日現在、見た目はかなり汚いものの、疼痛はほぼありません。ただし、排便後に拭くときはまだ痛みを感じます。
帯状疱疹を体験し、疾患の経過がどのようなものかわかって勉強になりました。
最後に、Beethovenの弦楽四重奏曲より、「病が癒えたることの神への感謝の歌」。
・Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart
2014年6月28日(土) 夕方、仕事を終えて沖縄に飛びました。妹夫婦に焼肉をごちそうになり、そのまま泊めて頂きました。
6月29日(日) は朝から、海中道路 を通って美ら海ファーム 馬ぐぁ広場に出かけ、与那国馬に乗りました。
与那国馬に乗るのは、2013年10月以来 でした。
牧場に到着して、まずは馬を湿原に迎えに行きました。草が茂ったかなり深い水溜りを越えたところに馬がいて、迎えに行くには長靴が役に立ちました。牧場の入り口近くまで連れ戻って、吸血蝿がたかるのを叩きながらブラッシング。終わると、広場を散歩。ちょっと特殊な手綱の使い方を習いました。
続いて、湿原を抜けて山中へ。駈歩で駆け上がって行ったのですが、先導するトレーナーの馬より私の馬の方が元気があり、ぶつかりそうになってしまいます。一本道の途中からは追い抜かせて頂きました。山腹に車が捨てられている箇所で折り返し。木々の合間から海が見えました。この山コースで閉口したのは蜘蛛の巣でした。見たこともない黄色い糸で、かなり粘性が強く、絡みつくとなかなか取れないんですね。頭や顔面をもう少しガードするような格好をすればよかったかなと思いました。
一旦牧場に戻ってからは、海に出かけました。砂浜は人の手が入っていなくてとても綺麗でした。落馬しても安全そうな場所だったので、トレーナーから「好きに乗って良いよ」と言われ、ひたすら砂浜を走り回って遊びました。次は、鞍を外して、手綱も一本にしてから裸馬に挑戦。そのまま遠浅の海に入りました。好き放題馬をあやつり歩きまわりましたが、馬は早く帰りたがり、少し沖に出そうとすると私の脚を噛もうとしてきて、結構緊迫感がありました。最後は、トレーナーの先生が馬に乗り、私が馬の尻尾に掴まって泳ぎました。与那国馬名物の尻尾つかまりです。
全コース終わって、海から見える公衆トイレ脇のシャワー (3分 100円) を浴びて、帰りました。
(この乗馬クラブに行かれる方のために注意事項がいくつかあります。まずは長袖長ズボンは日焼け防止のため有った方が良いです。また、長靴もあった方が良いです。山コースは、途中の湿地帯で転倒すると悲惨な目にあいますので、ある程度バランスを崩しても落馬しないくらいの経験はあった方が良いです。多分 20~30鞍くらいの経験があれば問題無いと思います。まぁ、いくつかコースはあるようなので、経験に応じて選べるとは思いますが。海コースで遊ぶ場合は着替え必要です)
続いて、泊魚市場 で夕食を購入し、漫湖公園の脇を抜けて、玉泉洞に行きました。そして夜は、妹夫婦の家で美味しい刺身と日本酒をごちそうになりました。その際、私が持参した日本酒も空けました。山中教授のノーベル賞授賞式で、アフターパーティーに用意された日本酒「加賀の月 満月 」です。とても美味しい日本酒でした。飲んでいる途中にドーンと音がして、外を見ると嘉手納基地でのアメリカフェスト 2014 の花火でした。
6月30日(月) は、朝 8時30分頃に沖縄県立中部病院に行きました。病院長が玄関前に立って、患者さん一人ひとりに挨拶している光景をみて驚きました。午前中は某内科 (※神経内科ではない) の回診に御一緒しました。ある医師から、「沖縄では、進行性核上性麻痺 (PSP) を見かけることが多い印象がする」と聞いたのですが、確かに言われてみれば・・・という感じでした。家族歴はないようなので、DCTN1変異 による PSP-like syndromeなどは考えにくいですね。本当に沖縄で多いのかどうか、各県での統計データを見てみたいところです。沖縄型 Charcot-Marie-Tooth病 にお目にかかることがあるかなと思って少し予習していきましたが、こちらは見ることはありませんでした。
12時30分から、コアレクチャー として「頭痛の診療」の講演をさせて頂きました。私にとって初めての講演で不安もありましたが、何とか無難に終わらせることができました。45分の持ち時間で 40分喋って 5分間の質疑応答。さすが一流研修病院というだけあって、積極的に質問してくださる方が多くいました。後になって、「アレも喋っておけば良かったな」とか「質問ではこう答えた方がわかりやすかったかな」とか反省することはありましたが、次に活かしたいです。
講演では、最後のスライドにメアドを載せて、「わからない点や相談したいことがあればこちらまで」と伝えたのですが、本当は「結婚相手募集中です。連絡はこちらまで」と冗談っぽく話す予定だったのです。あまりにも真剣な空気だったので、言い出せませんでした。ただ、講演途中で「片頭痛の有病率はこのくらいです。だいたい女性との飲み会すると患者さんが一人はいる計算になります。そこで飲み会中に頭痛ネタの相談に乗ると盛り上がるし、おいしい思いをしたりしなかったり・・・ (※ネタです)」と話すと、結構女医さんから笑いがとれていたので、少し攻めても良かったかも・・・。これは割りとどうでもよい反省。
講演を終えて、ハワイ大学事務局に併設された図書館でくつろいでいると、熱心な医師からいくつか質問を頂きました。質問されることで、こちらの勉強になることもありました。帰る前に聴衆のアンケート結果をもらいましたが、温かいコメントが多く、胸がいっぱいになりました。
その日の夕方の飛行機で帰りましたが、翌日から大変な出来事が私を待っていました。(「お尻受難」のエントリーに続く)
知り合いの萩原麻未 さんのリサイタルに行ってきました。
萩原麻未ピアノ・リサイタル
2014年6月27日(金) 午後7時 紀尾井ホール
フォーレ:ノクターン第1番 変ホ短調 Op.33-1, ノクターン第4番 変ホ長調 Op.36
ドビュッシー:ベルガマスク組曲 1. 前奏曲, 2. メヌエット, 3. 月の光, 4. パスピエ
ドビュッシー:喜びの島
ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ, ラ・ヴァルス
ジェフスキ:ウィンズボロ・コットン・ブルース
萩原麻未さんは、ジュネーヴ国際コンクールのピアノ部門で日本人初の優勝を飾ったピアニストです。成田達輝さんとの競演で聴いたことはありましたが、ソロで聴くのは今回が初めてでした。
プログラムはフランスものが中心。ドビュッシーの「月の光」はたまに聴く機会がありますが、ベルガマスク組曲として全曲聴くことができる演奏会はなかなか貴重ですね。
最後のジェフスキは大変な難曲。萩原麻未さんは完璧に弾きこなしていました。どれほどの難曲か、別の演奏家の動画を参考に貼っておきます。この曲は、両手を総動員するだけじゃなく、肘まで使います。
・Roger Wright plays Rzewski’s Winnsboro Cotton Mill Blues
アンコールはドビュッシーの亜麻色の髪の乙女でした。
「ラ・ヴァルス」や「ウィンズボロ・コットン・ブルース」のようにテクニカルな曲を完璧に弾きこなし、一方で「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」のような小品で幻想的な雰囲気を作り上げ、聴きながらさすが世界的なピアニストだと思いました。この日聴いたどの曲も、素晴らしい演奏でした。
演奏会が終わってから、萩原麻未さんや知人数名で行きつけの Barに行き、少し語って帰りました。Barで私が、「どうして技巧的な難易度の高い曲でプログラムを組むのですか?こんなに大変そうな曲を弾かなくても、綺麗な曲を美しく弾く技術があるのだから、そうした方が楽なのに」と聞いたら、「甘えが出るから」と仰っていました。こうしたメンタリティーがあるからこそ、世界のトップレベルに達することができたのかもしれませんね。