脳梗塞発症 3-4.5時間における rt-PA療法
2015年3月17日の British Medical Journal (BMJ) に興味深い論文が掲載されていました。
Thrombolysis in acute ischaemic stroke: time for a rethink?
脳梗塞に対する血栓溶解療法 (rt-PA) は、最初に 3時間以内で認可され、後に 4.5時間以内に拡大された経緯があります。現在、日本やアメリカ AHA/ASAのガイドラインでは、発症 4.5時間以内の血栓溶解療法を強く推奨しています。ところが、発症 3-4.5時間での rt-PA療法については未だに議論があるところで、ガイドラインによっては、弱い推奨だったり、通常考慮すべきではないという扱いだったりするようです。
この BMJ論文では、発症 3-4.5時間での rt-PA療法の安全性や有効性について再検討しています。まず、「強く推奨する」AHA/ASAガイドラインの根拠になった ECASS-IIIはベースラインの群間の違いがバイアスを生んでいるのではないかという意見があります。また、AHA/ASAガイドラインでは、IST-3について言及していますが、そのトライアルの 3-4.5時間でのデータについては言及していません。著者らが発症 3-4.5時間での rt-PA療法についてサブグループ解析をしてみると、信頼区間 95%で機能予後悪化は Odds比 0.76, NNH 16でした。また、2014年の meta-analysisについては、機能予後を改善するという結果を信用するには問題点が多く、一方で致死的な脳出血などの害は確実に存在するとしています (NNH 44)。
このように、脳梗塞発症 3-4.5時間以内における rt-PA療法については未だに難しい問題を孕んでおり、臨床医にとって「ガイドラインに書いてあるからやればいい」という単純な問題ではないことがよくわかります。大事なのは、発症 3時間以内であれば可能な限り早く血栓溶解療法を開始すること、3-4.5時間については議論があることを前提に適応を検討する、ということなのでしょうね。