2016年2月17日の Neurology誌に抗菌薬関連脳症についての総説が掲載されていました。
入院患者でこうした脳症をきたしたとき、抗菌薬関連脳症の存在を知らないと、例えば精神症状をせん妄として治療してしまうかもしれません。診断が遅れないように知識として持っておく必要があります。
著者らによると、抗菌薬関連脳症 (AAE) は 3つのフェノタイプに分けられるそうです。以下に要点を示しておきます。
① Type I
薬剤開始後数日以内に痙攣発作やミオクローヌスをきたす脳症。頭部MRIは正常で脳波異常がみられる。セファロスポリンやペニシリン系に多い。セファロスポリン関連脳症は、腎不全で多く報告されている。数日以内に改善する。GABAを介した抑制系のシナプス伝達の障害による易興奮性が原因と考えられている。
② Type II
通常開始後数日以内に精神症状、まれに痙攣発作がみられる。脳波異常は稀 (あったとしても、てんかん性というよりむしろ非特異的な異常) で、頭部MRIは正常、数日以内に改善する。プロカインペニシリン、スルホンアミド、フルオロキノロン、マクロライドに多い。ドパミンD2受容体やNMDA型グルタミン酸受容体を介した効果を示す薬剤 (コカイン、アンフェタミン、フェンサイクリジン) との類似性が指摘されている。
③ Type III
メトロニダゾールのみで出現する。薬剤開始後数週間以内に、しばしば小脳失調、まれに痙攣発作がみられる。脳波異常はまれで非特異的である。可逆性の MRI異常が小脳歯状核、脳幹背側部、脳梁膨大部にみられ、血管原性浮腫、細胞障害性浮腫を示す。病因的には、フリーラジカル形成やチアミン (ビタミンB1) 代謝と関連があるといわれている。
抗菌薬関連脳症
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(参考)
・バンコマイシン誘発振戦
映画「アマデウス」を見たことがあると、モーツァルトとサリエリの仲が良かったとは思えないのですが、なんと二人が共同で作曲した作品が見つかりました。実際には仲は悪くなかったのかもしれませんね。
どんな曲だったのか、Youtubeで演奏を聴くことができます。落ち着きのある、心地よい曲ですね。
・モーツァルトとサリエリの共作カンタータ、約200年ぶりに演奏 Newfound Mozart-Salieri collaboration played for first time
VIDEO
・Newfound Mozart-Salieri collaboration played for first time (2)
VIDEO
リバロキサバン (商品名:イグザレルト) の臨床試験 Rocket AFで用いられた INR測定用のデバイスは、患者の出血リスクを低く見積もる可能性が指摘され、2014年にリコールされました。その結果、ワルファリンとリバロキサバンの治療効果を比較した Rocket AFにおいては、ワルファリン群がきちんと目標治療域にコントロールされていなかった可能性が浮上しているようです。少し気になるニュースです。
2016年2月22日 (日本時間 23日) から敗血症の定義が改訂されるそうです。
すでに新しい定義を紹介したサイトが有ります。
SEPSIS: REDEFINED
改訂のポイントは下記のようです。
・感染に加えてSIRSの基準を満たすという文言が削られ、SIRSの代わりに簡易版SOFAスコアが用いられる。具体的には、敗血症は感染に加えて、収縮期血圧 100 mmHg以下, GCS≦13, 呼吸数≧22の頻呼吸のうち 2個以上。または SOFA 2点以上の上昇。
・重症敗血症という表現がなくなる
・敗血症性ショックの定義が、敗血症+平均血圧 65 mmHgを維持するためにバゾプレッシンを要する+Lactate > 2 mmol/Lを満たすもの (※適切な急速輸液の後) となる。
ガラッと変わるのでビックリです。用語を間違って使わないようにチェックが必要ですね。
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(2016.2.24追記)
JAMA誌に改訂された定義の詳細が掲載されていますので、論文にリンクを貼っておきます。無料で読むことが可能です。
・The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)
・Assessment of Clinical Criteria for SepsisFor the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)
・Developing a New Definition and Assessing New Clinical Criteria for Septic ShockFor the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)
胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎の予防や治療にプロトンポンプ阻害薬は効果的であり、臨床現場では頻繁に用いられています。実際に処方していて、副作用を経験することは非常に少なく、安心して使える薬というイメージがあります。ところが、ここ数年、いくつかの疾患リスクを高める報告が相次いでいます。
例えば、2013年4月の JAMA Internal Medicineには、高齢の退院患者の 1年後死亡率上昇と相関している可能性が指摘されています し、2016年1月の JAMA Internal Medicineではプロトンポンプ阻害薬が、慢性/急性腎臓病、急性間質性腎炎、低マグネシウム血症、クロストリジウム腸炎、市中肺炎、骨折のリスクを高める可能性がまとめて紹介されています。
そんな中、2016年2月15日の JAMA Neurologyにプロトンポンプ阻害薬の使用が認知症のリスクと相関する (hazard ratio, 1.44 [95% CI, 1.36-1.52]; P < .001) という論文が掲載されました。
タイトルだけ見たときはプロトンポンプ阻害薬はビタミンB12欠乏の原因になりうる ので、それを介して認知機能低下をきたしている可能性はないのかなと思ったのですが、考察ではその可能性に触れつつ、動物実験でプロトンポンプ阻害薬が脳の βアミロイドレベルを高めることなども紹介しています。
抗血小板薬による消化管出血の予防など、神経内科領域でもお世話になることの多い薬ですが、こうしたリスクを頭の片隅に置いて使っていきたいと思います。ただ漫然と使用するのは避けないといけません。
近年、学術雑誌の高騰化が進み、研究機関の予算を大きく圧迫しています。かのハーバード大学ですら四苦八苦しているほどです。
契約する科学雑誌数を絞って対策している研究機関も少なくないでしょう。そんな中、「takのアメブロ 薬理学などなど。 というブログで、Sci-Hubという海賊サイトの存在を知りました。なんと 4700万件の研究論文にフリーアクセスできてしまうサイトなのだそうです。
使い方としては、Pubmed で検索したときに表示される DOIなどを上記リンクに入力すると、論文にフリーアクセスできます。自分の論文で試してみたら、実際に PDFファイルが表示されました。途中で表示される文字を見ると、ロシアのサイトなのでしょうかね。
もちろん違法ですが、学術雑誌へのアクセスが困難になってきている研究者で手を出す人は結構いるのかもしれません。
米国てんかん学会によるてんかん重積の治療ガイドラインが Epilepsy Currents誌の 2016年1/2月号に出たようです。が、これまで我々が行っていたプラクティスと大きく変わる点はなさそうです。
“Evidence level U (Data inadequate or insufficient. Given current knowledge, treatment is unproven. Recommendation: None)” という表記が目立ちます。
Proposed treatment algorithm for status epilepticus
東日本大震災から 5年ということで、学術出版社 Wileyが関連する学術論文の無料公開を期間限定で開始しました。
東日本大震災3.11から5年 学術論文集
今年も3月11日が近付いてきました。5年前のあの日に発生し、日本各地に甚大な被害をもたらした東日本大震災の記憶は、多くの人々の心に強く刻まれています。
今なお不自由な生活を強いられている被災者の方々が少なくありませんが、被災地は復興への道を着実に歩んでいます。復興へ向けての取り組みと並行して、この5年間でさまざまな分野の科学者や医療従事者たちが、震災とその後の事象を基にした研究を進めてきたことも見逃せません。来る節目の日を前に、科学・医学・社会科学分野において世界的な学術出版社である私どもWileyは、東日本大震災に関する論文123報を選びました。これらの論文は、Wileyが出版する約1600の論文誌に掲載されたもので、それら論文誌の多くは900の学協会との提携により出版されています。
各論文が扱う主題は、地震・津波に関する地球科学的研究、防災・減災のための科学と技術、震災と原発事故が被災地の医療や人々の心理・社会に与えた影響、原発事故が環境やエネルギー政策にもたらした影響など多岐にわたります。Wileyは、これらの論文が、痛ましい被害を生んだ震災から得られた教訓を将来に伝え、また新たな研究の発展を促すのに役立つことを願っています。これらの論文コレクションはWiley Online Library にて2016年4月30日まで無料公開いたします。
一口馬主になっているレッドヴェルサスが、ダートに転向し、やっと未勝利戦を勝ってくれました。
・レッドヴェルサス 3歳未勝利 2016/02/06 京都03R 【競馬】
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ずっと惜しい競馬が続いていたので、やっとという感じです。まだ 3歳なので、今後に期待しています。なんとか、オープンまで行って欲しいです。
2016.02.06
2月6日レース後コメント(1着)
M.デムーロ騎手「上に伸び上がる感じで出たので良いスタートではなかったものの、促せば進んでくれましたしね。芝コースの部分で上手くスピードを乗せられて、前目でレースを進めることができました。積極的に出して行った割には折り合いも問題なくつけられましたし、道中は逃げていた馬をピタリとマークしながら直線まで持っていけました。仕掛け処での反応はしっかりあったのですが、直線に向いてから前の馬に少し離されてしまった際に、走りが若干フワフワしてしまった面はありました。それでも気が完全に抜けてしまった訳でもなく、追って立て直すとハミをもう一度しっかり取ってグイッと脚を使ってくれました。相手も最後まで渋太くて、外から見ていた皆さんを冷や冷やさせてしまったかもしれませんが、結果的には2着馬が目標になってくれた形。いい目標があったことでヴェルサスも最後まで気を抜かずに集中して走りきってくれました。前走は悔しいレースになりましたので、今日は勝つことができてホッとしています。ありがとうございました」
須貝調教師「惜しい競馬が何度もありましたからね。今日も最後までハラハラしながら見ていましたが、勝利を挙げることができて本当に良かったです。初勝利がここまで延びてしまったのは申し訳なく思っていますが、今日は本当によく頑張ってくれたヴェルサスを誉めてあげたいですね。嬉しい勝利です。ここまで使い詰めできていたこともありますので、レース後は放牧に出して心身をリフレッシュさせてあげたいと思います」
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(参考)
レッドヴェルサス