最近の医学ネタ
論文の reviseの締め切りとか、雑誌の編集会議用の資料作りとか、色々重なって、ブログを更新する時間が全く取れませんでした。最近出た論文や医学系ニュースも概要のみチラッとチェックしているだけですが、後々見返すことがありそうなので、備忘録として簡単にメモしておきます。
①Low-Dose versus Standard-Dose Intravenous Alteplase in Acute Ischemic Stroke
“Approximately two thirds of the patients were Asian, and 43% were recruited from China. ” とアジア人を多く含む試験で、アルテプラーゼ 0.6 mgは 0.9 mgに死亡や障害で非劣性を示せず。rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 にも「アルテプラーゼの至適用量に関するデータは国内外ともに未だ乏しく、このような用量の差が人種 差に基づくものか否かも含めて今後の更なる検討が必要である」とか書いていますし、今後は、アジア人のみを対象として至適用量を探す研究が出てくるんですかね。今のところ、clinicaltrials.govでそれっぽいのはないけれど。
②Ticagrelor versus Aspirin in Acute Stroke or Transient Ischemic Attack
発症 24時間以内の急性虚血性脳卒中が対象。13199人をランダム化比較された。1:1割り付けで、薬物の用量は下記。
Patients received either ticagrelor (a loading dose of 180 mg given as two 90-mg tablets on day 1, followed by 90 mg twice daily given orally together with loading and daily doses of aspirin placebo) or aspirin (a loading dose of 300 mg given as three 100-mg tablets on day 1, followed by 100 mg daily given orally together with a loading dose and twice-daily doses of ticagrelor placebo).
Ticagrelorはアスピリンに脳卒中、心筋梗塞、死亡の複合エンドポイントで優位性を示せず。
In conclusion, in our trial involving patients with acute ischemic stroke or transient ischemic attack, ticagrelor was not found to be superior to aspirin in reducing the risk of the composite end point of stroke, myocardial infarction, or death.
二次エンドポイントである虚血性脳卒中もギリギリだめ。
The main secondary end point, ischemic stroke, occurred in 385 patients (5.8%) in the ticagrelor group and 441 patients (6.7%) in the aspirin group (hazard ratio, 0.87; 95% CI, 0.76 to 1.00; nominal P=0.046)
あと、Ticagrelorは呼吸苦での内服中断が 1.4%あり。
Dyspnea and bleeding events were the most frequent factors accounting for the difference, with rates of discontinuation due to dyspnea in the ticagrelor and aspirin groups of 1.4% and 0.3%, respectively, and rates of discontinuation due to any bleeding of 1.3% and 0.6%.
やはり、脳卒中の急性期治療でアスピリンに勝てる薬剤は無いんですね。
③Popular Pain Drug Linked to Birth Defects
神経障害性疼痛の治療で用いられるプレガバリン (商品名:リリカ) で先天性異常のリスクが高まる可能性があり、妊婦さんは注意を。
④Olanzapine: Drug Safety Communication – FDA Warns About Rare But Serious Skin Reactions
抗精神病薬のオランザピンで DRESS (Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms) の報告。1996年以降 23件の報告が FDAに寄せられているが、報告されていないものもあるため、実際にどの程度生じるかは不明。
⑤Mucocutaneous Findings and Course in an Adult With Zika Virus Infection
ジカウイルスでは皮膚粘膜の所見に注意。講演で忽那先生がおっしゃっていた通り。
⑥Migraine photophobia originating in cone-driven retinal pathways
片頭痛患者は光過敏を示すが、緑色よりも白色や青色、黄色、赤色で悪化する。円錐由来の網膜経路が関与しているらしい。
ポリペクトミーの既往のある非糖尿病患者へのメトホルミン投与で、異時性大腸腺腫やポリープが減るらしい。
メトホルミンの癌に対する効果の研究は最近色々と行われています。
Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) で高齢者のサブグループを調べた研究。糖尿病のない 75歳以上の高齢者において、収縮期血圧 140 mmHg未満よりも 120 mmHg未満で管理した方が、主要な心血管イベント、総死亡は減るようだ。
高齢者の降圧については凄く議論のある分野で、ガイドラインは下げ過ぎない方向に向かっていて、この研究だけでプラクティスを変えるようなことにはならなさそう。今回は時間がなくてアブストラクトしか見てないので、時間ができたら先行研究と比較吟味したいところ。
⑨ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第1回]認知症治療薬,どう使う?
✓ 認知症治療薬は,効果が限定的であることも,改善効果を示すこともあり,各薬剤の特徴を知って適切に使用したい。
✓ 認知症治療薬は少量から開始し,有害事象にも注意しながら12週間を目安に効果を判定する。
✓ 服薬中の錐体外路症状,興奮,不穏は,薬剤の有害事象である場合もある。
✓ 薬剤の有害事象かどうかの判断は,薬剤を中止してその症状が軽快するか否かで見極める。
⑩ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第2回]スタチン,いつやめる?
✓ 1次予防でのスタチンの適応は,リスク計算や年齢だけでは判断できない。
✓ 1次予防目的でスタチンを始める場合,効果発現には2年程度かかる可能性がある。
✓ 虚弱高齢者へのスタチンの継続は,目的をきちんと話し合う。
✓ 終末期のスタチンの中止は,患者にとって害にはならず,QOLの改善につながる可能性もあることから,中止も考慮したい。
TIAもしくは虚血性脳卒中でアスピリンとプラセボと比較して、二次予防効果を検討。過去の 12の臨床試験のデータを使用。アスピリンは 6週間の虚血性脳卒中再発リスクを 60%低下し、重症ないし致死性虚血性脳卒中を 70%低下させた。特に TIAや minor stroke患者で効果が大きかった。これは重症脳卒中の低減効果によるものだった。これらの効果は投与量や患者の特性、TIA/虚血性脳卒中の原因に独立してみられた。