ストリートオーケストラ
ブラジルのサンパウロのスラム街を音楽で変えた実話が映画になっています。公式サイトでストーリーを見ていると、ベネズエラのエル・システマを思い起こさせます。
ストリート・オーケストラ
都内では上映が始まっていますが、福島県では 12月3日からフォーラム福島で上映開始。始まったら見に行こうと思っています。
ブラジルのサンパウロのスラム街を音楽で変えた実話が映画になっています。公式サイトでストーリーを見ていると、ベネズエラのエル・システマを思い起こさせます。
ストリート・オーケストラ
都内では上映が始まっていますが、福島県では 12月3日からフォーラム福島で上映開始。始まったら見に行こうと思っています。
この本は、国際頭痛分類第3版β版に準拠しています。従って、国際頭痛分類第3版β版でどのように頭痛が分類されているか知っていると読みやすいです。下記のサイトで、予め分類をざっと眺めておくと良いでしょう。
日本頭痛学会:国際頭痛分類第3版beta版日本語版
一般的な頭痛の入門書では、患者の多い一次頭痛 (緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛のような機能性頭痛) の内容が厚い反面、二次性頭痛 (多くは器質的疾患が原因の頭痛) の記載は少ない傾向にあります。一方で、救急の教科書ではくも膜下出血や髄膜炎を中心とした二次性頭痛についての記載は多いですが、どうしても緊急性の高い二次性頭痛が主体となってしまいます。本書は一次性頭痛はもちろんのこと、頭痛の入門書や救急の教科書であまり扱わないような二次性頭痛まで網羅的に扱っているので、頭痛診療の穴をなくす意味でとても役に立つと思います。私は届いた時にざっと目を通しましたが、もう一度精読したいと思っています。
初学者には少しハードルが高いかもしれませんが、「片頭痛の診断なら大体自信を持って出来る」というくらいのレベルの方にとてもお勧めの本です。
戦後70年という大きな節目を過ぎ,2年後には,平成30年を迎えます。
私も40を越え,体力の面などから様々な制約を覚えることもあり,ここ数年,医師としての自らの歩みを振り返るとともに,この先の自分の在り方や務めにつき,思いを致すようになりました。
本日は,社会の高齢化が進む中,医師もまた高齢となった場合,どのような在り方が望ましいか,医師という立場上,現行の医療制度に具体的に触れることは控えながら,私が個人として,これまでに考えて来たことを話したいと思います。
国家試験合格以来,私は医療行為を行うと共に,医師の望ましい在り方を,日々模索しつつ過ごして来ました。伝統の継承者として,これを守り続ける責任に深く思いを致し,更に日々新たになる日本と世界の中にあって,日本の医師が,いかに伝統を現代に生かし,いきいきとして社会に内在し,患者たちの期待に応えていくかを考えつつ,今日に至っています。
そのような中,何年か前のことになりますが,2度の職務質問を受け,加えて加齢による体力の低下を覚えるようになった頃から,これから先,従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合,どのように身を処していくことが,病院にとり,患者にとり,また,私のあとを歩む医師にとり良いことであるかにつき,考えるようになりました。既に40を越え,幸いに健康であるとは申せ,次第に進む身体の衰えを考慮する時,これまでのように,全身全霊をもって当直の務めを果たしていくことが,難しくなるのではないかと案じています。
私が医師の職についてから,ほぼ14年,この間私は,病院における多くの喜びの時,また悲しみの時を,患者と共に過ごして来ました。私はこれまで医師の務めとして,何よりもまず患者の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが,同時に事にあたっては,時として患者の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。私が,医師として大切な,患者を思い,患者のために祈るという務めを,患者たちへの深い信頼と敬愛をもってなし得たことは,幸せなことでした。
医師の高齢化に伴う対処の仕方が,医療行為や,その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには,無理があろうと思われます。また,医師が重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には,医師の行為を代行する看護師を置くことも考えられます。しかし,この場合も,医師が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま,生涯の終わりに至るまで医師であり続けることに変わりはありません。
医師が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,地域医療が停滞し,患者の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが,胸に去来することもあります。
始めにも述べましたように,医師法の下,医師は医療に関する権能を有します。
そうした中で,このたび我が国の長い医療の歴史を改めて振り返りつつ,これからも医師がどのような時にも患者と共にあり,相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう,そしてその務めが常に途切れることなく,安定的に続いていくことをひとえに念じ,ここに私の気持ちをお話しいたしました。
みなさまの理解を得られることを,切に願っています。
(元の文章)
バグパイプ内で増殖した菌で管楽器奏者が死亡したという報道がありました。
バグパイプ内の菌で男性死亡? 管楽器奏者に警鐘
AFP=時事 8月24日(水)6時52分配信
AFP=時事】英国で、バグパイプの内部に繁殖していた菌を吸い込み続けた男性が死亡した事例が報告された。報告を行った医師らは管楽器奏者に対し、楽器を定期的に掃除するよう呼び掛けている。
英医学誌「ソラックス(Thorax)」に掲載された記事によると、死亡した61歳の男性は毎日バグパイプを演奏しており、7年間にわたり乾性のせきと息苦しさに悩まされていた。
だが、バグパイプを自宅に置いてオーストラリアへ3か月間旅行に出掛けた際だけ、症状が急速に緩和されたという。
これを受けて主治医らがバグパイプ内を調べたところ、湿気のこもった留気袋や音管、マウスピースに、多様な菌類が繁殖していたことが分かった。
男性は治療のかいなく2014年10月に死亡。検視の結果、肺には重度の損傷が見つかった。
菌類を吸い込んだバグパイプ奏者の死亡例は、この男性が初めてとみられる。男性が患っていた過敏性肺炎の原因は、この菌だった可能性があるという。
記事では、「管楽器奏者は、楽器を定期的に清掃することの重要性と、その潜在リスクについて認識する必要がある」と警鐘を鳴らしている。【翻訳編集】 AFPBB News
実際の論文は下記になります。
Bagpipe lung; a new type of interstitial lung disease?
バグパイプの中から検出された真菌は、”Paecilomyces variotti, Fusarium oxysporum, Penicillium species, Rhodotorula mucilaginosa, Trichosporon mucoides, pink yeast and Exophiala dermatitidis” でした。論文にある figureをみると、「うわーっ、やばい」という感じが伝わってきます。
ちなみに、今回検出された菌の多くは、過敏性肺炎の起因菌としてこれまで報告されているもののようです。そのため、これらの真菌を慢性的に吸入していたことが、過敏性肺炎の引き金になったのではないかと推測されています。
論文の考察には、サクソフォン奏者とトロンボーン奏者での真菌による過敏性肺炎の症例が引用されています。サクソフォンの症例では、”Ulocladium botrytis” と “Phoma sp” がサクソフォンから検出され、これらの真菌に対する血清特異的抗体が陽性でした。トロンボーンの症例では、たくさんの “Mycobacterium chelonaeabscessus group” 、”Fusarium sp (真菌)”、それとわずかな “Stenotrophomonas maltophilia” 及び大腸菌が培養されたようです。トロンボーンの報告中に、さらに 7名の金管楽器奏者の楽器からの培養結果が表として纏められていて、その菌の多さにビックリします。
こういう報告を読むと、金管楽器が菌管楽器とならないように、持ち主はきちんとした手入れが大事ですね。ちなみに、私の知り合いは、”bagpipeじゃなくて bugpipeだな” って言っていました。誰ウマ。
例によって、最近の論文が中心の備忘録です。
①Bortezomib Treatment for Patients With Anti-N-Methyl-d-Aspartate Receptor Encephalitis
抗NMDA受容体脳炎は、治療に難渋することが少なくないが、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ (商品名:ベルケード) が奏功した 2例の報告。
症例 1は 30歳代前半の黒人女性。卵巣奇形腫がみつかり手術、それに加えて血漿交換、リツキシマブ、シクロフォスファミド、ステロイド大量療法で改善なし。7ヶ月人工呼吸器管理となっていた。CD19陽性細胞は消失。血漿交換、ステロイド、免疫グロブリン大量療法を受けた後、わずかに改善した。ボルテゾミブ 1.3 mg/m2を 1, 4, 8, 11日目に皮下注射 (アシクロビル, cortimoxaoleを併用) したところ、忍容性は良好で有害事象もなかった。数カ月後、症状や抗体価は著明に改善し、軽度の高次脳機能障害のみ後遺症として残存した。
症例 2は、20歳代前半の白人女性。卵巣奇形腫はみつからなかった。血漿交換をうけて改善し、職業訓練に復帰することができた。しかし、20ヶ月後、再発。血漿交換及びリツキシマブは効果がなかった。CD19陽性細胞は消失。ステロイド、血漿交換、免疫グロブリン大量療法は効果がなかった。ボルテゾミブは症例 1と同じレジメンで使用したところ、忍容性は良好で、有害事象もなかった。後遺症として軽度の記憶障害などを残すのみで著明に改善し、再発もない。
以下個人的な感想。抗NMDA受容体脳炎について、2011年の Lancet Neurologyに書かれた総説の治療戦略はよくまとまっているけれど、これほど効果がありそうなら、将来的にはボルテゾミブも加わってくるかもしれない。その前に、きちんとした臨床試験が必要だけど。
②A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis.
自己免疫性脳炎を起こす疾患と自己抗体や診断基準がまとまっていて読みやすい。ただ、figure 1の診断アルゴリズムは、各種自己抗体の結果がでるのに数週間かかることを考えると、臨床的には使えないかもしれない。自己抗体とそれに対応する疾患 (table 1) は使えそうなので備忘録として貼っておく。
③International consensus guidance for management of myasthenia gravis
重症筋無力症の “international consensus guidance”。エキスパートの意見のためかガイドラインではなくてガイダンスという表現が使われている。「寛解」などいくつかの用語の定義が 示された後に、治療法が箇条書きで書かれている。重症筋無力症が heterogeneousであるためか、薬剤の投与量には言及されていないが、治療戦略を立てる上での基本となることが纏まっている。
④Lack of KIR4.1 autoantibodies in Japanese patients with MS and NMO
多発性硬化症や視神経脊髄炎に対する KIR 4.1抗体について、日本からの報告。この抗体は、当初すごく注目されたけれど、再現性が示されていない。日本人を対象に ELISAと LIPS (luciferase immunoprecipitation system) で調べたけれど、やはり使えなさそうだという結論。
KIR4.1については、2016年春の講演で少し触れたので、その時のスライドを貼っておく。
⑤Multicentre comparison of diagnostic assay: aquaporin-4 antibodies in neuromyelitis optica
視神経脊髄炎関連疾患における抗アクアポリン4抗体の assay法についての論文。診断精度の問題で、新ガイドラインでは cell-based assayを推奨しているけれど、specialist centerでは免疫組織化学法やフローサイトメトリーも同じくらいだという結果。Table 2に assay法の一覧と、figure 5に診断精度の図が纏まっている。
⑥Progressive Brain Atrophy in Super-refractory Status Epilepticus
超難治性てんかん重積患者に伴う脳萎縮を調べるため、発症 2週間以内に撮った MRIと、それから 1週間以上あけて 6ヶ月以内に撮った MRIを比較した。方法として、5 mmスライスのFLAIR画像で脳室と脳の比 (ventricular brain ratio; VBR) を調べた。Inclusion criteriaを満たしたのは 19名であり、てんかん発作を抑制するために中央値 13日間の麻酔薬管理を必要とした。VBRの変化率の中央値は 23.3%、脳萎縮は麻酔薬の投与期間に相関していた。
⑦Psychotic disorders induced by antiepileptic drugs in people with epilepsy
抗てんかん薬には、副作用として精神症状 (抗てんかん薬誘発の精神症状 antiepileptic drug induced psychotic disorder; AIPD) が出現するものがある。著者らは、どのような患者で精神症状をきたしやすいかを調べた。てんかんでも精神症状をきたすことがあるので、抗てんかん薬による精神症状と診断するためのアルゴリズムは figure 1、精神疾患の診断基準は table 1の通りとした。その結果、抗てんかん薬誘発の精神症状は、女性、側頭葉病変、レベチラセタムの使用で有意に多かった (特にレベチラセタムのオッズ比は 21.676!)。カルバマゼピンは内服により逆に精神症状が減少した。
レベチラセタムは初回から治療量で使える薬剤で、薬剤相互作用や皮疹などの副作用が少なく、使われる頻度が非常に増えているけれど、精神症状はてんかんを治療する医師は絶対知っておかないといけない副作用だと思う。
⑧Randomized Trial of Thymectomy in Myasthenia Gravis.
対象は 18歳~65歳、MGFA分類 II-IV, 発症 5年以内で抗AChR抗体陽性の重症筋無力症患者。介入は胸腺切除術+プレドニゾンの隔日内服で、対照はプレドニゾンの隔日内服。主要アウトカムは、 3年後の QMGスコア (ブラインド化して評価) と 3年間に要したプレドニゾンの平均用量 (time-weighted)。
介入群 (胸腺切除+プレドニゾン) では、対照群 (プレドニゾン) と比べ、QMGスコアが低く (6.15 vs. 8.99, P<0.001)、プレドニゾンの平均投与量も少なかった (隔日 44 mg vs. 60 mg, P<0.001)。また、介入群の方が免疫抑制剤アザチオプリンを必要とした症例が少なく (17% vs. 48%, P<0.001)、増悪による入院も少なかった (9% vs. 37%, P<0.001)。治療による合併症に有意差はなかった。
抗AChR抗体陽性の重症筋無力症で胸腺切除術を行うのは一般的だが、実はこの論文が、初めて行われた RCTであることを知って驚いた。75年前、胸腺腫のない重症筋無力症に対して胸腺切除術の効果が報告された後、観察研究はいくつもあるが、 RCTは行われていなかったらしい。抗AChR抗体陽性の重症筋無力症に胸腺切除術が有効であるという RCTでのエビデンスを示した点で、歴史的な論文になると思う。なお、抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は別なので要注意。
⑨Spt4 selectively regulates the expression of C9orf72 gene sense and antisense mutant transcripts
ALSと C9orf72の話は、これまで何度もブログで紹介した。転写延長因子 Spt4の阻害により、C9orf72のセンスとアンチセンスの伸長した転写産物や転写された 2量体ペプチド (DRP) を減少させ、動物モデルでは神経変性を抑えることができた。Spt4のヒトオルソログである SUPT4H1のノックアウトにより、患者細胞でやはりセンスとアンチセンス RNA凝集体の産生低下と DRPタンパク減少がみられた。
この論文の通りだとすると、SUPT4H1は C9orf72異常の ALSでは治療法開発のターゲットの一つはなるのかもしれない。それ以外の原因による ALSでどうなのかはわからないけれど (日本人では C9orf72の GGGGCC反復伸長による ALSは少ない)。
日本脳炎、セントルイス脳炎、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ウエストナイル熱、EBウイルス、インフルエンザA型、そのほかコクサッキーBやエコーウイルスのようなエンテロウイルス後に起こることが報告されている。これらのウイルスは、脳皮質、視床、脳幹、脊髄を侵す一方で、黒質を好んで侵すことも報告さている。黒質病変による脳炎後パーキンソニズムは、これまで 1915~1928年に流行した嗜眠性脳炎 (von Economo脳炎) で報告されてきた。
今回、著者らはエンテロウイルスによりレボドパ反応性のある脳炎後パーキンソニズムをきたした症例の MRIや PETを評価し報告した。初回の頭部MRIでは、脳幹のびまん性の異常信号がみられたが、1年後に撮像した MRIでは、黒質の非対称性 (右優位) の破壊的変化がみられた。Fluorine F 18–labeled fluorodopa PETでは、線条体に持続性の取り込み低下がみられた。著者らによると、脳炎後パーキンソニズムでドパミン系のシナプス前機能の障害を証明した研究は、この論文が初めてである。
⑪Time- and Region-Specific Season of Birth Effects in Multiple Sclerosis in the United Kingdom
生まれた月と多発性硬化症の発症に相関があるというイギリスでの研究。日照との関連が推測されている。
多発性硬化症の再発の季節性については、これまで色々と指摘されている (以前講演で使ったスライドを下に示す)。生まれた月まで関連が・・・というのが、もし本当ならばびっくり。
⑫Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment
今回著者らは、再灌流療法後の抗血栓療法を 24時間以内に行う早期開始 (early intiation) と 24時間以降に行う通常管理 (standard management) を前向き組み入れ試験で比較した。抗血栓療法をどのように行うかは脳卒中治療医に任せたが、多くの症例で初回投与時には loading dose (アスピリン 300 mg) が用いられた (抗血小板薬 2種類併用や抗凝固薬の使用もあり)。
患者の内訳は、経静脈治療 34%, 経動脈治療 (血管内治療) 32%, 経静脈+経動脈治療 34%であった。早期開始群では全出血は少なかったが、症候性出血や機能予後 (mRS) は早期開始と通常管理で差はなかった。再灌流 12時間以内の超早期開始では、出血性変化のオッズ比の増加はなかった。再灌流の方法による臨床的アウトカムに差はなかった。
現在、血栓溶解療法を行った後、基本的には 24時間は抗血栓療法を行わないのが一般的で、日本のガイドラインにもそのように記されている。一方で、抗血小板薬を内服をしている患者に血栓溶解療法をした方が、内服していなかった患者に比べて出血リスクは高くなるが、機能予後は良かったという報告もある。今回の研究は、再灌流療法後に抗血栓療法を始めるタイミングについて、一石を投じるかもしれない。ただ、発症から治療開始までの時間や心房細動の有無など大事な項目でベースラインの群間に差があるのが気になるところ。
⑬Predictive value of ABCD2 and ABCD3-I scores in TIA and minor stroke in the stroke unit setting.
一過性脳虚血 (TIA) 後の脳卒中リスクを予測ツールとして、ABCD2 scoreなどは現在広く受け入れられており、一般の外来や救急外来では評価は確立している (scoreについての日本語解説はこちらを参照)。今回、脳卒中ケアユニット (stroke care unit; SCU) に入院した発症 24時間以内の TIAや minor stroke (NIHSS 4点未満) 患者を対象に前向きコホート研究で ABCD2や ABCD3-Iを評価した。ABCD2 scoreの感度・特異度は、過去のメタアナリシスと似た結果だった。個々のスコアをみると、年齢 (A)、血圧 (B)、糖尿病 (D) は早期あるいは 3ヶ月後の脳卒中と相関しなかった。一方で、臨床症状 (C)、症状持続時間 (D)、同側の頸動脈狭窄 (D)、拡散強調像高信号域 (D) は SCU settingにおいて重要であった。
不死化した神経幹細胞 CTX03を用いて、オープンラベルで安全性と忍容性を調べた第 1相試験。CTX03は、中大脳動脈閉塞モデルのラットでは、用量依存的な運動感覚機能の改善が確認されている。
対象は NIHSS 6点以上、mRS 2-4点、脳梗塞発症から 6~60ヶ月経った 60歳以上の男性。頭蓋骨に穴を開け、脳梗塞と同側の被殻に投与した。臨床データと頭部画像を 2年間追跡した。主要評価項目は安全性 (合併症と神経学的変化) とした。
13名の男性 (平均 69歳、 60-82歳) が組み入れられ、 CTX-DPの投与を受けた。治療前の NIHSSの中央値は 7点 (6-8点) であり、脳卒中からの平均経過期間の平均は 29ヶ月 (SD 14) だった。3名の男性が皮質下梗塞のみで、 7名は右大脳半球の梗塞だった。免疫学的あるいは投与細胞による有害事象はなかった。その他、手技や併存疾患による有害事象があった。刺入部位付近の FLAIR高信号が 5名で認められた。2年後の NIHSSの改善は 0-5点 (中央値 2点) だった。
以下、個人的感想。慢性期脳梗塞に対する幹細胞治療は、2016年6月2日 Stroke誌に骨髄由来培養幹細胞 SB623の第 1/2相試験が発表されたばかりで、競争が過熱している。SB623も CTX03も baselineの NIHSSが 一桁後半で、改善効果は 2点程度という点は、単純比較はできないけれど効果は似ている印象を受ける。注意しなければいけないのは、両試験とも評価者がブラインド化されていない点である。オープンラベル試験で評価項目が NIHSSのようにソフトエンドポイントだと、結果に臨床試験担当者や被験者の意図が混入しやすい。また、いずれの製剤も頭蓋骨に穴を開けて培養細胞を注入しなければならず、それなりに侵襲はある。
一方で、本邦では静脈投与可能な製剤の治験が行われている。以前、2009年に本望先生の講演を聴いた時は効果としては期待できそうな印象を持ったが、ようやく形になってきているようだ。この治療のネックは患者本人から骨髄を採取しなければならない点だろう。こちらは、SB623や CTX03と異なり、急性期~亜急性期の脳梗塞が対象のようだ。
私は脳梗塞に対する幹細胞治療については全然詳しくないけれど、いくつかある方法のなかでネックとなってくるのは、(1) どのような細胞を用いるか (その都度患者由来の細胞から培養して作製するより、既成品の方が便利)、(2) どのような投与経路とするか (経静脈投与が望ましい)、(3) 薬価、なのではないかと思う。
⑮NICE recommends ticagrelor with aspirin for three years post-MI
イギリスでは心筋梗塞治療のファーストラインとして、アスピリンに加えて ticagrelor 90 mg 1日 2回を 12ヶ月追加し、その後アスピリンを継続する施設が多い。NICEの新しいガイダンスの草稿では、12ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者や心筋梗塞や脳卒中をさらに起こすリスクの高い状態が続く患者に対して、アスピリンに加えて ticagrelor 60 mg 1日 2回を 3年間続けることを推奨している。Ticagrelor 90 mgと 60 mgの間に中断が起きないようにすべきである。3年以上のアスピリンとの併用は、効果や安全性についてのデータが不十分であり推奨しない。
ちなみに、ACCとAHAも 2016年に共同で、冠動脈疾患後の抗血小板薬 2剤併用についてのガイドラインを出しており、JACCと Circulationに掲載されている。
ミトコンドリア脳筋症の一つである MELASの脳卒中様症状についての総説。Arginineや citrullineによる治療などについて解説している。いずれも RCTは行われていないが、著者らは次のような治療を推奨している (文献的根拠に乏しく、expert opinionという印象)。
<Short-term Therapy>
脳卒中様発作に対しては、arginine hydrochlorideを loading doseで静脈内投与すべきである。Arginineの至適用量は不明だが、0.5 g/kgを症状発症 3時間以内に急速投与することが推奨される。脳卒中様発作が見られた時、画像診断が有用だが、そのために arginineの投与が遅れるべきではない。脳循環を保つため生理食塩水を急速投与すべきで、血糖値が正常なら代謝を正常化させるために可能な限り早くブドウ糖を含む輸液を投与すべきである。精神症状がある場合は、非痙攣性てんかん重積ではないか、脳波を評価すべきである。なぜなら、MELASでは精神症状の原因としてしばしばみられるからだ。
<Ongoing Therapy>
Arginineを急速投与した後、0.5 g/kgの 24時間持続投与を 3-5日間続ける。Arginineの維持量をどの程度続ければよいかの臨床的エビデンスはないが、ミトコンドリアの専門家の多くは少なくとも 3日間は続けることを推奨している。臨床症状が 3日以上続くようなら、卒中が進行しているか画像評価し、5日間 arginine治療を続けることを検討すべきである。嚥下の安全性が確認され、経口摂取ができそうなら、静脈内投与と同量 (1-to-1 dose) の L-arginine内服に移行するかもしれない。
<Prophylaxis>
MELASの患者が最初の卒中を経験したら、脳卒中様発作を減少させるため、予防的に arginineを投与すべきである。経口で投与量 0.15~0.30 g/kg/day 分3が推奨される。
温暖化に伴い、北大西洋や北海でビブリオが増えている。報道では生牡蠣を介した感染が懸念されている。日本の生牡蠣はどうなんだろう・・・。
知り合いの医師らの報告が、New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載された。凄い!
日本からの報告が、同じく New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載されたようだ。アニサキスの症例報告といえば、2013年7月18日に紹介した論文が面白かった。この論文も、figureに著者の胃にいるアニサキスの写真が載っていて有名 (論文内容の日本語紹介はこちら)。
Twitterで話題になっていました。これは面白かったです。
楽譜には、作曲家からの指示が細々と書かれていますが、時に謎な指示があります。例えば、「指揮者は突然痙攣に見舞われたかのように硬直し、譜面台をつかんで背後の床に頭を向けて倒れる」みたいな指示です。現代曲に多いです。「ティンパニーに頭を突っ込む」みたいに有名なものもありますが、初めて知った斬新な指示もあり、読んでいて思わず吹いてしまいました。
「#楽譜に出てくる謎の指示選手権」タグで続々と無茶ブリが発掘される
エリザベート国際音楽コンクールで作曲グランプリを受賞した酒井健治さんから、私が結婚するとき (※現時点では予定なし) お祝いに 8小節作曲してあげると言われているのですが、そのときの楽譜の指示は無茶ぶりじゃないことを祈っています。
第27回パシフィック・ミュージック・フェスティバル2016、PMFオーケストラ東京公演を聴きに行きました。
PMFオーケストラ東京公演
メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ショスタコーヴィチ:交響曲 第8番 ハ短調 作品65
ワレリー・ゲルギエフ (指揮)
レオニダス・カヴァコス (ヴァイオリン)
PMFオーケストラ
2016年8月9日 (火)
開演 19:00
サントリーホール
PMFオーケストラは若手演奏家の集まりですが、とてもレベルが高くてビックリしました。管楽器のソロパートなどを聴いても、海外の有名オーケストラと違いを感じませんでした。演奏とは直接関係ありませんが、川村拓也さんという北海道大学医学部の学生が、なんとヴァイオリニストとしてこのオーディションを通っていたんですね。同じ医療人として、また音楽を共通の趣味とする人間として、いつか会ってみたいです (彼の場合は音楽も趣味というより仕事かもしれませんが)。
私がこのコンサートに行った目的は、「カヴァコスが聴きたかったから」です。
カヴァコスが演奏するブラームスのヴァイオリン協奏曲は、オーケストラとの調和が素晴らしかったです。オーケストラがカヴァコスに合わせているというよりも、カヴァコスがオーケストラと対話しながら表現をしている感じがしました。そのおかげで、この曲の室内楽的魅力が際立っていました。また、洗練されていない音は一つもなくて、全ての音に惹きつけられました。カヴァコスは現在、世界を代表するヴァイオリニストと言われていますが、納得の演奏でした。
アンコールは無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番の第3楽章。私がこれまで聴いたバッハの無伴奏曲の中で、最高と言える演奏でした。一緒に聴きに行っていた友人の口から、演奏後に「神だ」という言葉が漏れたくらいです。全ての声部が数人で弾いているかのようにくっきりと浮き上がり、旋律はこの上なく洗練されていました。この曲はいくつかの声部を和音で同時に演奏しなければならず、左手の形が難しい和音の時には旋律となる声部に何らかの影響が出てもおかしくないのですが、全くそれを感じさせませんでした。囁くように弾いたかと思えば、ホール中が音で埋め尽くされるようなところもあり、作りがとても立体的でした。
終演時刻は22時を回っており、ぐったりと疲れましたが、とても良い演奏会でした。
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(参考)
2016年8月7日、しゃんでりあの君 (chun chukurin先生) と福島第一原発方面にドライブに出かけました。
まず、田村市都大路から国道 288号線を大熊町の方に入り、「この先帰還困難地域」の看板を見ながら坂を下って県道 31号線に出ましたが、交差点にはゲートが作られ、通行証がないと入れませんでした。
そのまま大きく迂回して、国道 6号に出ると、そこは四輪車は普通に通行できました。しかし、被曝の危険のため、二輪車や歩行者は区間により通行禁止でした。
国道 6号沿いでも原発に近い地域は、道路沿いの住宅の入り口が柵で塞がれ、また周辺の駐停車可能スペースはすべて潰されていました。帰還困難地域につながる道路も柵で塞がれており、暑い中警備員が脇に立っていました。双葉厚生病院や県立大野病院の看板、遠くに福島第一原発の排気塔が道路沿いに見えました。
福島第一原発の近くを通過したとき、モニタリングポストの数値は 4.1 µSV/hrを示しており、その時の車内の放射線量は 2.46 µSv/hrでした。ただ、それも走っているうちに徐々に下がり、桃内駅に到着しました。
桃内駅は平成22年12月4日改正と書かれた時刻表が哀愁を誘いました。
また、使われていない駅の案内板が裏向きの置かれていました。
さらに北上し、小高駅に行きました。この周辺は復興が進み始めたところで、駅前にもそれなりに人影がありました。放射線量も、0.15~0.2 µSV/hr程度で、郡山駅や福島駅と大差ありませんでした。
すでに JRも区間により開通していましたが、小高駅~竜田駅は代行バスでの運行になっているようでした。
小高駅から、吉沢牧場に向かいました。
希望の牧場
ここでは被爆牛たちが放牧されており、ゆったりと草を食べていました。帰還困難地域を見たときとはまた違った意味でシュールな光景でした。
吉沢牧場からは折り返して、富岡駅跡に行きました。ここはほぼ更地になった駅の向こう側に放射性廃棄物が大量に置かれ、その向こうがすぐ海でした。駅から波打ち際が見えるくらい海に近いので、津波の時はひとたまりもなかったことでしょう。
富岡駅跡からふたば復興診療所の脇を通り天神岬に上ると、展望台に津波について解説した案内板があり、遠くに火力発電所が見えました。
最後は、いわきに行って、お気に入りの寿司屋である政寿司で食事をしました。ここはカウンター後ろの冷蔵庫に飛露喜や十四代などがあり、頼むとリーズナブルな値段で出してくれるのを知っておくとよいです。
福島第一原発周辺は、現在は立ち入れる地域が広がっています。自分の目で見て、この地域の現状について改めて考えさせるものがありました。自動車で通過するくらいなら被曝のことはあまり考えなくてよいと思うほどの放射線量だと思う (妊婦・小児を除く) ので、原発事故がどのような惨禍をもたらすか、一度皆様も見に行ってみてはどうでしょうか。また、いわきの政寿司にも足を延ばしてみてください。4000円ほどで、都内なら数万円するような、びっくりするほどおいしい寿司が食べられます。
—
(参考)
・科学
2016年7月16-18日の三連休は、JR東日本の三連休パスを使って、有意義に過ごすことができました。私にとって初の青森でした。
7月16日(土)
秋田県に行って、当直でした。夜間は急患 20人弱。救急車 5台ほどで、ほぼ一睡もできずでした。連休の初日とあってか、急性アルコール中毒や酔っぱらいの喧嘩による外傷など、飲酒関連が散見されました。お酒はほどほどに。
7月17日(日)
病院でシャワーを浴びて、電車に乗りました。まず、奥羽本線で東能代駅に行き、15時12分発のリゾートしらかみに乗りました。東能代駅を出て、しばらくしてから海沿いの区間は景色が綺麗でしたが、あとは普通の風景でした。景色の綺麗なところで途中下車する時間的余裕があるとよかったですね。あと、新しいハイブリッド車両だと車内が楽しめたのですが、旧式の車両だったのは、下調べが足りませんでした。
18時31分に弘前駅に到着し、この日は、ホテルルートイン弘前にチェックインしました。飲みに出かけたのは駅前のわいわいという店で、郷土料理で有名なホタテとイカのメンチとか、ホタテ貝味噌焼とか、けの汁などを頼みました。刺身もおいしかったです。日本酒は、華一風、梅村屋純米吟醸、田酒純米大吟醸古城乃錦、豊杯純米吟醸を飲みました。
7月18日(月)
10時58分発の奥羽本線で弘前駅から青森駅に移動しました。続いて、12時4分青森駅発の青い森鉄道で浅虫温泉 12時24分着。徒歩 10分少々のところにある浅虫水族館に行きました。ここは本州最北端の水族館なのです。
浅虫水族館
浅虫水族館は、入ってすぐにサメの水槽があり、また陸奥の海の展示がありました。1階は通常の展示の他に海獣館があり、また 2階には淡水に住む魚の展示やイルカ館がありました。イルカ館では、2匹のイルカが展示されており、イルカたちはボールで遊んでいました。建物自体はそれほど広くなく、1時間くらいで見て回ることができるのですが、「イルカの芸」「イルカの食事」「アザラシの食事」など時間をずらしてイベントをしており、飽きることなく楽しむことができました。惜しかったのは食堂です。置いてあるメニューがラーメンなどであり、せっかく海が近いのだし、海の幸を楽しめるようにしていたら、収益がアップするのにと思いました。
温泉に入ったりゆっくりしたいところでもありましたが、15時29分、浅虫温泉駅から青い森鉄道で八戸駅へ移動しました。八戸駅は 16時41分着。17時15分発の八戸線で本八戸駅に行きました。そこで、八戸市民病院で勤務する知人と合流して観光に連れて行ってもらいました。
まず行ったのが館鼻公園です。ここには、1886年に流行したコレラで亡くなった方たちを供養する碑が、展望台の近くにありました。また、展望台からは「天狗」の看板のある店が見えましたが、東日本大震災の津波では、その店まで海につかったそうです。
それから、津波に浸かったという道路を通りました。Youtubeで有名な動画があると聞きましたが、どれかはわかりませんでした。
次は蕪嶋神社。ウミネコの繁殖地として有名な神社です。おびただしい数のウミネコがいました。神社に登っていく階段には、傘が置いてありました。糞をかぶらないですむように使うそうです。
その後、駅前の松膳という店で、B級グルメとして有名なせんべい汁を頂きました。田酒や豊盃を始め、美味しい地酒が揃っていました。食事をしてから、20時12分八戸駅発の新幹線で帰りました。
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