メキメキ上達する 頭痛のみかた

By , 2016年8月30日 4:00 PM

メキメキ上達する 頭痛のみかた (Elizabeth W. Loder / Rebecca C. Burch / Paul B. Rizzoli著, 金城光代/金城紀与史訳、メディカルサイエンスインターナショナル)」を献本頂きました。

この本は、国際頭痛分類第3版β版に準拠しています。従って、国際頭痛分類第3版β版でどのように頭痛が分類されているか知っていると読みやすいです。下記のサイトで、予め分類をざっと眺めておくと良いでしょう。

日本頭痛学会:国際頭痛分類第3版beta版日本語版

一般的な頭痛の入門書では、患者の多い一次頭痛 (緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛のような機能性頭痛) の内容が厚い反面、二次性頭痛 (多くは器質的疾患が原因の頭痛) の記載は少ない傾向にあります。一方で、救急の教科書ではくも膜下出血や髄膜炎を中心とした二次性頭痛についての記載は多いですが、どうしても緊急性の高い二次性頭痛が主体となってしまいます。本書は一次性頭痛はもちろんのこと、頭痛の入門書や救急の教科書であまり扱わないような二次性頭痛まで網羅的に扱っているので、頭痛診療の穴をなくす意味でとても役に立つと思います。私は届いた時にざっと目を通しましたが、もう一度精読したいと思っています。

初学者には少しハードルが高いかもしれませんが、「片頭痛の診断なら大体自信を持って出来る」というくらいのレベルの方にとてもお勧めの本です。

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誕生日を向かえてのお気持ち

By , 2016年8月30日 4:00 PM

戦後70年という大きな節目を過ぎ,2年後には,平成30年を迎えます。
私も40を越え,体力の面などから様々な制約を覚えることもあり,ここ数年,医師としての自らの歩みを振り返るとともに,この先の自分の在り方や務めにつき,思いを致すようになりました。
本日は,社会の高齢化が進む中,医師もまた高齢となった場合,どのような在り方が望ましいか,医師という立場上,現行の医療制度に具体的に触れることは控えながら,私が個人として,これまでに考えて来たことを話したいと思います。

国家試験合格以来,私は医療行為を行うと共に,医師の望ましい在り方を,日々模索しつつ過ごして来ました。伝統の継承者として,これを守り続ける責任に深く思いを致し,更に日々新たになる日本と世界の中にあって,日本の医師が,いかに伝統を現代に生かし,いきいきとして社会に内在し,患者たちの期待に応えていくかを考えつつ,今日に至っています。

そのような中,何年か前のことになりますが,2度の職務質問を受け,加えて加齢による体力の低下を覚えるようになった頃から,これから先,従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合,どのように身を処していくことが,病院にとり,患者にとり,また,私のあとを歩む医師にとり良いことであるかにつき,考えるようになりました。既に40を越え,幸いに健康であるとは申せ,次第に進む身体の衰えを考慮する時,これまでのように,全身全霊をもって当直の務めを果たしていくことが,難しくなるのではないかと案じています。

私が医師の職についてから,ほぼ14年,この間私は,病院における多くの喜びの時,また悲しみの時を,患者と共に過ごして来ました。私はこれまで医師の務めとして,何よりもまず患者の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが,同時に事にあたっては,時として患者の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。私が,医師として大切な,患者を思い,患者のために祈るという務めを,患者たちへの深い信頼と敬愛をもってなし得たことは,幸せなことでした。

医師の高齢化に伴う対処の仕方が,医療行為や,その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには,無理があろうと思われます。また,医師が重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には,医師の行為を代行する看護師を置くことも考えられます。しかし,この場合も,医師が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま,生涯の終わりに至るまで医師であり続けることに変わりはありません。

医師が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,地域医療が停滞し,患者の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが,胸に去来することもあります。

始めにも述べましたように,医師法の下,医師は医療に関する権能を有します。
そうした中で,このたび我が国の長い医療の歴史を改めて振り返りつつ,これからも医師がどのような時にも患者と共にあり,相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう,そしてその務めが常に途切れることなく,安定的に続いていくことをひとえに念じ,ここに私の気持ちをお話しいたしました。
みなさまの理解を得られることを,切に願っています。

(元の文章)

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