ILAE発作及びてんかん分類2017

By , 2017年3月25日 8:38 AM

2017年3月、ILAE (International League Against Epilepsy) から新しく発作分類とてんかん分類が発表された。

Instruction manual for the ILAE 2017 operational classification of seizure types. (2017.3.8 published online)

Operational classification of seizure types by the International League Against Epilepsy: Position Paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

以下、簡単に要約する。なぜこの分類になったかとか、用語の定義などは原著参照のこと。

<発作の分類>

1981年分類から新しくなった点。

  1. “部分 (partial)” の語を “焦点 (focal)” に変えた。よって、部分発作は焦点発作と呼ばれるようになる。
  2. 発作型は “focal onset (焦点発作)”, “generalized onset (全般発作)”, “unknown onset (不明)” に分けられる。
  3. “Unknown onset” は将来さらに分類できるかもしれない。
  4. 焦点発作の分類に覚醒 “awareness” を用いる。
  5. 認知障害 (dyscognitive), 単純部分発作、複雑部分発作、心因性、二次性全般化の語は用いなくなった。
  6. 焦点発作で新たに加わった発作型は、自動症 (automatics), 自律神経 (autonomic), 行動停止 (behavior arrest), 認知機能 (cognitive), 情動 (emotional), 運動過多 (hyperkinetic), 感覚 (sensory), 焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures) を含む (下記の figure拡大バージョン参照)。弛緩性 (atonic), 間代性 (clonic), 点頭てんかん (epileptic spasm), ミオクローヌス性 (myoclonic), 強直性 (tonic) 発作は焦点発作の場合も全般発作の場合もありうる。
  7. 全般発作で新たに加わった発作型は、眼瞼ミオクロニアを伴う欠神発作 (absence with eyelid myoclonia), ミオクローヌス性欠神発作 (myoclonic absence), ミオクローヌス性強直間代性発作 (myoclonic-tonic-clonic), ミオクローヌス性弛緩性発作 (myoclonic-atonic), 点頭てんかん (epileptic spasms) である。

基本バージョンはこちら。

Basic version

Basic version

拡大バージョンはこちら。

Expanded version

Expanded version

流れとしては、まず発症時の状態で焦点発作 (旧部分発作) か全般発作かを検討する。目撃者がいなかった場合など、どちらかわからない場合は、今回から「不明 (unknown onset)」という分類が可能になった。個人的な意見だけど、治療の際に焦点発作でも全般発作でも対応できる抗てんかん薬を選択するという点で意味を持ってくるのかもしれない。焦点発作は、覚醒障害の有無により更に分類する。従来の「複雑部分発作」は「覚醒障害 (意識障害) を伴う焦点発作 (focal impaired awareness seizure)」と呼ばれるようになる。発作をさらに運動症状で発症したか、あるいは非運動症状で発症したかで分類し、細分化することもある。従来の二次性全般化は、「焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures)」として扱われる。

なお、発作型はできるところまで分類すれば良い。焦点発作でも、覚醒の障害があったかどうかわからないときは、単に「焦点発作」とだけ記せば良い。これらの分類については、厳格さよりも実用的であることを重視したため、”operational classification” という名前になっている。

<てんかんの分類>

発作型を診断した後、それを基にてんかんのタイプを診断する。てんかんのタイプは焦点性てんかん (focal epilepsy), 全般てんかん (generalized epilepsy), 全般てんかんと焦点性てんかんの合併 (combined generalized, and focal epilepsy epilepsy), 不明 (unknown epilepsy) に分類される。全般てんかんでは、典型的には脳波で全般性の spike-wave activityがみられるだろう。全般性強直間代発作で脳波が正常な場合は注意が必要である。この場合、myoclonic jerkや家族歴など補助的な根拠が大事になる。てんかんのタイプの次にてんかん症候群の診断をおこなうが、てんかん症候群の診断ができない場合は、てんかんのタイプが最終の診断になるかもしれない。てんかんのタイプとしてよくしられているのは、小児欠神てんかん、West症候群、Dravet症候群などがあるが、ILAEがこれまでてんかん症候群の正式な分類を出していないことには留意すべきである。

特発性全般てんかんという語は不適切だという意見もあるが、小児欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、覚醒時全般性強直間代発作 (覚醒時大発作のこと) については、特発性全般てんかんの語は許容できる。

ILAE classification of the epilepsies

ILAE classification of the epilepsies

今回の分類を読んだ感想。確かに、1981年に提案された ILAE発作分類や、1989年に提案された ILAEてんかん・てんかん症候群分類が抱える矛盾点をある程度解決しているといえる。でも、それらの分類が使いやすくて、とても浸透しているので、今回の分類が臨床現場で受け入れられるかはよくわからない。過去には、2010年に発表された発作分類及びてんかん分類の改訂版は普及しなかった訳だし。

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