反射の検査

By , 2014年8月1日 7:58 PM

反射の検査 (ロバート・ワルテンベルグ著、佐野圭司訳、医学書院)」を読み終えました。古い症候学の本ですが、内容に圧倒されました。

腱反射の検査は、神経症候学の初学者たちにとって高いハードルとなっています。覚えなければならない反射がたくさんあり、かつ判定が難しく、さらに解釈に頭を悩ませることも少なくありません。ワルテンベルグは、(深部) 腱反射を「筋肉が急激な伸展に反応して収縮すること」という原則で捉え、様々な研究者がまちまちに名付けた膨大な数の反射を整理しました。引用文献数 465 (英語、ドイツ語、フランス語などを含む) が示す通り、内容は極めて網羅的ですが、読みやすくまとめられています。神経内科医は一度は読んでおきたい本です。

佐野圭司先生は同じ本で、さらにワルテンベルグの論文 2本を訳出しています。その一本が、”Babinski反射の 50年” で、ワルテンベルグが 1947年の JAMAに “The Babinski reflex after fifty years” というタイトルで書いた論文です。ワルテンベルグは Babinskiの弟子でした。もう一本が、”Brudzinski徴候と Kernig徴候” です。どちらも素晴らしい論文でした。

本書を読んで、ワルテンベルグの才能は、「本質を見抜くこと」にあると思いました。(深部) 腱反射は、「筋肉が急激な伸展に反応して収縮すること」という原則で全てを整理しました (腱を打腱器で叩くと筋肉は伸展する)。Babinski反射は「同側集団屈曲反射の一部で、よじ登る運動の過程の痕跡的な表れ」であり、Babinski変法も全てこれで説明できます。Brudzinski徴候や Kernig徴候は、「脊髄や神経根の伸展で生じる疼痛 (脊髄や神経根の自由な運動が炎症や疾病で妨げられると出現する) を逃れるため、伸展を最小にする姿勢をとる」ことが本質です。

神経症候学に関する本を読んだのは久しぶりでしたが、とても良い刺激を受けました。こういう本を読むと、診察が楽しくなります。

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy