ザルツブルグ旅行(2004年8月12日〜8月19日)

ザルツブルグ第2日目

 早朝目が醒め、テレビをつけると、まだ深夜番組の続きをしていた。金髪の女性がストリップをしながら、ダイヤルQ2のような番号を連呼しているの だ。「アハトヒュアヒュア ヒュンフヒュアヒュア・・・(=844 544)」。この番号を囁くような口調で繰り返していた。朝から刺激が強いなぁ・・・。

 朝食を食べに行く。受付で女性に挨拶して、ルームナンバーを告げたあと食堂に入る。メニューはハムやソーセージなどの肉料理が中心で、少しだけ野 菜やフルーツがある。俺はパンはあまり好きではないので、おかずにコーヒーといった感じで朝食を摂る。周りを見ると、爽やかなウエイターがコーヒーを注い で回っている。各机の上にはポットに入ったコーヒーがあるのだが、客のコーヒーが減っていると、「coffe?」と聞いて注ぎ、また、違う ドリンクを答えても持ってきてくれる。こういったところはサービスが良いなと思う。

 朝食後は楽器を連れてザルツブルグ市街へ。この町はザルツァッハ川を挟んで新市街と旧市街に分かれる。午前中はまず、ホテルのある側の新市街を散 策することとした。ホテルから川の方向にまっすぐ歩いていると、ザルツブルグ音楽祭であることを示す看板があり、さらに進むとザルツァッハ川に出た。とは いってもホテルから 200mくらいなのだが。川沿いの景色は絶景だった。この辺りの風景画があったら欲しいなぁ。

 そして、少し川沿いを歩いてから、川と反対の新市街の道路へ。逆に橋を渡るとそこはすぐに旧市街となる。新市街で最初にまずモーツァルテウムを見 つけた。建物の前にはモーツァルテウムオーケストラのトラックが止まっていた。さらに道なりに歩くとマリオネット劇場に着いた。その隣は州立劇場、裏手は ミラベ ル庭園となっている。ミラベル庭園の中にはミラベル宮殿があり、サウンドオブミュージックの舞台にもなったとのこと。

 さて、州立劇場の前は広場になっていて、モーツァルトの住んでいた家がある。「Mozart libenhaus」という看板も見られる。中に入ると、モーツァルトの使用していた楽器や楽譜が展示されていた。それらを見ているうちに、モーツァルト の愛用して いたチェンバロの前に一人の館員が来て、なにやら解説を始めた。続いておもむろに演奏を始める。曲はモーツァルトの作品1のピアノソナタ。幼少時に作曲し た曲を愛情 たっぷりに弾いてくれた。ミスタッチは少しあったが、全然気にならないほどの良い演奏だった。記念にその楽器で弾かれたモーツァルトのCDを一枚買って帰 ることとした。

 モーツァルトの家の向かいはドップラーの家。そこからザルツァッハ川に向かって歩いた1件目はカラヤンの生家である。歴史に名を残した人物の家が 3件並んでいるのは偶然だろうか?モーツァルトの家のすぐ近所でカラヤンが育っているというのは、何か偶然ではない気がした。

 モーツァルトの家の斜め向かいの楽譜屋に寄ってみる。品揃えの中でも、日本製の楽譜も多い。数点の楽譜と、イラストが可愛い絵本を購入し、午前の 散策を終える。

 午後は「GASTH OF MARIA PLAIN」というレストランで食事をする。ザルツブルグ中が一望できる高台にあり、外のテーブルで食事をした。昼からビールを飲みながらかなりご機嫌。 名物の牛肉料理をごちそうになる。蜂が闖入し驚く場面もあったが、御愛嬌。今回のツアーで来た人達と挨拶をする。明日以降全員別行動なので、今日会うのが 最初で最 後だ。一組の中年夫婦と、毎年音楽祭に来ているという青年一人(日本に着いて、帰りの電車の中で偶然再会し、千葉大学の医師であると知る)、それとコー ディネーターの山本さんと俺の5人ということになる。

 ホテルにタクシーで戻るとまた別行動。午後は旧市街を散策する。カラヤンの生家まで行って、その前の橋を渡る。ザルツァッハ川には、こ こから南にむかってマカルト橋、シュターツ橋、モーツァルト橋という橋が架かっているが、この橋はマカルト橋である。ピューリンガーというCD屋を探し当 てたが、少し期待外れ。一旦ホテルに戻る。

 ホテルの部屋に戻って、そっと楽器ケースを開ける。モーツァルトのコンチェルト数曲を小さな音で弾いて、響きを楽しむ。日本で弾くのと全然雰囲気 が違う。 と、サービスのサンドイッチが届けられた。驚くほど大量のサンドイッチ。昼食を摂って間もないのに、こんなに食べきれないよと頬張る。

 19時にオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」が始まるため、少し早めにホテルを出る。昼食で一緒だった人達とホテルで待ち合わせて一緒にタクシーで 向かう。思ったほど道は混んでいない。祝祭大劇場前には、たくさんの着飾った人がいる。祝祭大劇場には冷暖房がなく、日中の演目は、奏者も観客も汗だくだ と聞いていたが、夕方でも十分暑かった。

 演目については、日本で見たことのある演目だったが、オペラは演出により全然変わってくる。こういった登場人物の少ないオペラには、祝祭劇場の舞 台は広すぎた。また、演出もやりすぎていて、主人公達がバドミントンをするようなシーンもあった。それに、首輪をつけられた人間が、犬のように連れ回され るシーンは「や りすぎだろう、そういう内容のオペラじゃないよ」と思った。しかし、伝統に甘んじることなくそうした枠を外すところが、逆にこの音楽祭の伝統なのかなとも 考えられる。ただ演出の中でも、石と羽を対比 させて、堅いモラルと、軽い欲望を天秤にしていたのは評価出来、また、音楽がとても素晴らしく、特に指揮者が良かった。音楽だけでも何を伝えたいか的確に 伝えてい た。演出はUrsel unt Karl-Ernst Herrmannで指揮者はPhilippe Jordanという。この指揮者は将来売れてくるのではないだろうか。他の年にはブーイングが起き、大騒ぎになったこともあるらしいが、今年は無事終了し た。

 ホテルに戻って、食事をしようとしたが、既に閉まっていた。日本と違って深夜まで営業しているコンビニもなく、空腹を紛らわすためにホテルの Barに繰り出した。客は殆どおらず、カウンターに座っていた客一人が、俺と入れ替わりに出ていった。Barではキューバ音楽が流れており、「コスモポリ タン」というカクテルを注文。残念なことにBarでも食事のオーダーは終了しているようだ。ただキューバ音楽と薄暗いBarの空間が非常にマッチしていて 楽しめた。マスターがキューバとどんな関わりを持っているのか聞きたかったが、そこまでの英語力はない。今日一日を思い出しながら、2杯目のカクテル 「ビッグバン」を注文。ここがどこなのかなど考えながら黄昏れる。「ザルツブルグだ」とイメージすればそんな気もするし、「ウィーンだ」とイメージする とそんなようでもある。「東京だ」と考えると、それが当然の考えにも思える。人間の認識とは非常に不安定なものだ。最後に「ゾンビ」っていうカクテルを 注文すると、マスターに「アルコールが強いですよ」と忠告された。でも、「カクテルくらいの量なら100%アルコールだって大丈夫だよ」と考えて、注文 したら、その認識が甘かった。溜まった疲労から睡魔に襲われ、勘定を済ませると、部屋に戻り、泥のように、眠った。


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