ルツェルン旅行(2005年9月13日〜9月19日)

ウィーン第3日目

 前日、コンセルジュに頼んでおいたため、6時くらいにホテル前にタクシーが止まっていて、 空港までスムーズに行くことが出来た。何しろ飛行機は7時40分発。6時半時には空港に着いていないといけない。 ホテルから空港までは距離が多少あるが、50ユーロくらいと、予想より安かった。

 出国手続きを済ませてから、空港内の本屋でベートーヴェンの人形と、お土産のエ○本を購入。 エ○本は、ビニールがかかったまま、友人の手に渡ることとなる。

 飛行機(BA699)の窓から下を見下ろすと農場の風景。何度も飛行機に乗ったせいか、恐怖心はない。 何より心強いのが、隣の席に非常に美しい金髪女性が座っていること。

 ヒースロー空港が近づくと、上空で飛行機が数機、円を描くように旋回していた。 私が乗った飛行機も、ある一定の高度を保ったまま、その列に加わった。 アナウンスは、ドイツ語、英語で、内容は不明。ただ、機内の雰囲気では大きなトラブルではないようだ。 なかなか着陸しないため、飛行場で何かあったのかと不安になったが、隣の女性は平然としている。 それを見て、日本男児たるもの、このくらいのことで取り乱す訳にはいかないと、 青い顔をしながらも、平気なふりをしていた。 上空で少し暇を潰した飛行機は、何事もなかったように着陸した。

 着陸して、私の後ろの席の男性が、私の隣の席の女性と 親密な関係であることがわかった。何だか損した気分だ。

 ヒースロー空港には、9時15分に着いたが、東京行きの飛行機は13時50分。 かなり待ち時間がある。空港内を2周くらいしたが、暇を持て余していた。 CDショップに寄ってはみたが、興味を引くようなものはない。 英字新聞を数紙買って、近くの椅子で読んでいることにした。 また、日本の新聞も売っていたので、貪るように読んだ。 久しぶりの日本の記事に、懐かしさを感じた。

 搭乗時間が迫り、搭乗口に向かう途中の薬局で、大学時代の部活の後輩への土産を購入した。 購入したのは、「family planning」コーナーに売られていた、コンド○ム! レジの麗しいイギリス人女性の、蔑むような視線が痛かった。

 機内(BA005)では、右側の窓から、若いイギリス人女性、私、初老の男性の順に座っていた。 私が、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ(バッハ)」の楽譜を出して眺めていると、 突然男性が英語で話しかけてきた。「日本人がイギリスの作曲家を読んでいて、 イギリス人が日本の作家を読んでいるのはとても面白いね!」

 右をみると、イギリス人女性が読んでいるのは、村上春樹の本である。 男性は、「文化の交流だね」と続けた。 さらに男性が「パリで村上春樹に会ったときにサインを貰ったよ」と 言ったことに、イギリス人女性は「本当?」と目を輝かせた。

 私は、村上春樹のことはあまり知らなくて、その男性に、 イギリス人女性へのポイントを稼がれてばかりなことに 少し不愉快な思いがしたが、3人で仲良くなればいいかと考え直した。

 女性がトイレに立つというので、通路への道を空けるのに、 私と男性は立ち上がって、先に通路に出た。 すると、男性が私に「バッハ難しいよね。ヴァイオリニスト?」と 聞いてきたので、「内科医で、専門は神経内科です。」と答えると、 「私はアムステルダム大学のPhysicsの教授で、3ヶ月Kyoto Univ.に 教えに行くところだよ」と教えてくれた。そして、「私の父は医師だったけど、 良く家でカルテットをやっていたよ。私はクラリネットを吹くんだけどね。」 と会話が盛り上がり、お互い好きな演奏家を語り合ったりしていた。 我々が通路で盛り上がっていることに、最初はスチュワーデス達は良い顔をしなかったが、 「アムステルダム大学のPhysicsの教授」が効いたのか、 非常に愛想良く接してくれるようになった。

 こういった会話での英語は、特に私のように語学が得意ではない者にとっては、 少ない単語で、簡単な単語で、ポイントを絞って話すのが、コツだ。 1つのセンテンスに、ポイントは1つ。そうしないと、会話がどんどん混乱してくる。

 雰囲気として、名前を聞いたりというのが野暮な感じだったので、 その男性がどんな人かはそれ以上はわからなかったが、一期一会を感じた。 3人の雰囲気はとても良く、心地よい空の旅だった。

 日本の上空にさしかかると、イギリス人女性が憧れの眼差しで 日本の国土を見ていた。ヨーロッパでは同じ立場だったので、気持ちがよくわかる。 日本で良い思い出を作って、イギリスに帰って欲しい。


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