麻疹

By , 2008年3月23日 2:13 PM

呼吸器内科のmethyl先生から、e-mailを頂きました。本人の了解を戴いたので、転載します。

先日、フジテレビで木村 太郎氏がこんなこと言ってました。You tubeからです。

【遅れる日本の対策 日本の「はしか」米国へ 】

要旨としては麻疹感染による死亡より麻疹ワクチン接種による死亡が多いが、国際的にみて接種は行ったほうが良いだろう。ということです。何を見て、こんなこと言ったんでしょうか?

あまりにも腹がたったので調べてみました。いくつかのサイトからの引用を並べてみます。

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疫学
感染症発生動向調査では国内約3,000の小児科定点から麻疹患者数は年間 11,000人から 22,000人の報告があり、実際にはこの 10倍以上の患者が発生していると考えられる。この中で 2歳以下の罹患が 60%以上を占めており、罹患者の 95%以上が予防接種未接種である。

麻疹による合併症重症例の例数の統計はないので不明確だが、1998年から 1999年における沖縄での流行から推定すると、肺炎の合併が年間 4800例、脳炎は年間 55例、死亡例は年間 88例程度と考えられる。ワクチン接種率発症予防には麻疹ワクチンが有効だが、国内での麻疹ワクチン接種率は 80%程度にとどまっていると推定される。

麻疹の合併症について
合併症は 5歳以下あるいは 20歳以上で多い。下痢が患者の8%、中耳炎が 7%、肺炎が 6%におこると報告されており、肺炎はウイルス性のことも重複感染による細菌性のこともある。脳炎が 1,000例に 1例程度報告されており、死亡率は約 15%で、後遺症が 25%に残るとされている。肺炎・脳炎の合併は年少であるほど死に至る危険性が高いので注意が必要であり、感染を予防することがもっとも重要である。
また、麻疹ウイルスの持続感染によると考えられている亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が麻疹患者の 100万例に 5~10例おこると言われている。進行性の神経症状、痴呆症状を示し、最終的には死に至る予後不良の疾患であるが、米国では麻疹ワクチンの普及により激減した。

麻疹ワクチンの有効性・副作用
ワクチンによる免疫獲得率は 95%以上と報告されており、有効性は明らかである。1997年度厚生省感染症流行予測調査事業による麻疹 PA抗体保有状況によると、各年齢層での麻疹抗体保有率は、ワクチン接種を受けていないものは 10才頃までに麻疹抗体を獲得し、維持するようになる。これに対して、ワクチン接種を受けている者は、20~29才の年齢層で低い抗体価を示しているものの、今のところ免疫の持続は良好である。
副反応に関しては、1998年度の厚生省の予防接種後健康状況調査報告書によると、接種後 28日までに初発した発熱は22.7%にみられ、そのうち 38.5℃以上であったものは 13.2%であった。このうち接種後 6日までの発熱は 7.4%、38.5℃以上は 4.1%であった。最も頻度の高い 7~13 日目の発熱は 11.4%であり、うち 38.5℃以上は 6.3%であった。発疹は 8.8%(うち 6日以内は 2.8%、7~13日目は 4.7%)に認められる。いずれも軽症でありほとんどは自然に消失するが、けいれんが 0.4%の頻度で認められ、このうち 85%は熱性けいれんであった。対策としては熱性けいれん既往者に対しては、予防としてあらかじめ抗けいれん剤(例:ジアゼパム坐剤)を処方しておき発熱性疾患罹患時に行う方法と同じ方法で予防することが可能である。ゼラチン含有ワクチンを使用していた頃はゼラチンによるアナフィラキシーショックなどの症状を呈することがあった。このゼラチンアレルギーが問題となって以降、武田薬品は 1996年12月(lot H701)から、阪大微研は 1998年 11月(lot ME-15)から、千葉血清は 1998年6月 (lot C4-1) からゼラチン・フリーとなった。北里研究所は 1998年 7月 (lot M19-1) から低アレルゲン性ゼラチン (プリオネクス) に変更した。また蕁麻疹、接種部位の発赤、クインケ浮腫等のアレルギー反応も認められ、最近では接種後数時間から翌日に出現する発熱あるいは発疹などの遅延型のアレルギー反応の報告が散見される。蕁麻疹の発症は 3.0%に認められ、即時型アレルギー反応と考えられる1日以内の蕁麻疹を認めたものは 0.4%であった。ごく稀に (100~150万接種に 1例程度) 脳炎を伴うことが報告されているが、麻疹に罹患したときの脳炎の発症率に比べると遙かに低い。SSPEの発生も米国の追跡調査ではワクチン既往のない自然麻疹患者では 100万人あたり 5~10人であるのに対し、ワクチン接種者では 0.5~1人と 1/10の低さである (国立感染症研究所感染症情報センター)

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厚労省の調査によると、はしかワクチンによる副反応としては、軽い発熱や発疹など以外に、けいれんを起こす人が300人に1人程度(0.34%)、うち9割は熱性けいれんで、脳炎・脳症は94~01年度の8年間に3人報告、副反応が原因と疑われる死者は、2002年までの過去8年間に3人報告されているそうです。
(朝日新聞2003年3月11日)

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また、日本のMRワクチンおよび単抗原ワクチンはゼラチンを含まず、欧米で使われている安定剤としてゼラチンを含んでいるMMRワクチンよりもアナフィラキシーなどのアレルギー症状の出現頻度はより少ないことが推測される。この点からも、麻疹、風疹単抗原ワクチン、及びMRワクチンの2回接種は、海外において広く使用
されているMMRワクチンの2回接種と同等あるいはそれ以上の安全性があると考えられる。
(日本小児科学会 )
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客観的に考えると、明らかにメリットの方がデメリットを上回ると言えそうです。

 

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