將進酒
昨日、さいたまの料亭に行ってきました。私の前任者のお別れ会です。そこの座敷に、下記のような書が掛かっていました。
古來聖賢皆寂寞
惟有飮者留其名
木堂と署名がありましたので、犬養毅の書です。
女将さんに訊いたところ、李白の詩の一節なのだそうです。「聖人、賢者と呼ばれた人は古来いるけれど、名を残した者は、すべて酒飲みである」というような意なのだとか。そして酒を勧めることになるのですな。
さっそく、ネットで探すと、詩が見つかりました。
將進酒
李白
君不見黄河之水天上來
奔流到海不復回
君不見高堂明鏡悲白髮
朝如青絲暮成雪
人生得意須盡歡
莫使金尊空對月
天生我材必有用
千金散盡還復來
烹羊宰牛且爲樂
會須一飮三百杯
岑夫子,丹丘生
將進酒,杯莫停
與君歌一曲
請君爲我傾耳聽
鐘鼓饌玉不足貴
但願長醉不用醒
古來聖賢皆寂寞
惟有飮者留其名
陳王昔時宴平樂
斗酒十千恣歡謔
主人何爲言少錢
徑須沽取對君酌
五花馬,千金裘
呼兒將出換美酒
與爾同銷萬古愁
日本語訳も紹介します。
將進酒
君 見ずや 黄河の水 天上より來たるを,
奔流 海に到りて 復(ま)た 回(かへ)らず。
君 見ずや 高堂の明鏡 白髮を 悲しむを,
朝には 青絲の如きも 暮には 雪と 成る。
人生 意を得(え)ば 須(すべか)らく 歡を 盡くすべく,
金尊をして 空しく 月に對せしむる 莫(なか)れ。
天 我が材を生ずる 必ず用 有り,
千金 散じ盡くして 還(ま)た復(ま)た 來たらん。
羊を 烹(に) 牛を 宰(ほふ)りて 且(しばし)らく 樂を爲(な)せ,
會(かなら)ず須(すべか)らく 一飮 三百杯なるべし。
岑夫子(しんふうし), 丹丘生(たんきうせい)。
將に酒を進めんとす, 杯 停(とど)むること莫(なか)れ。
君が 與(ため)に 一曲を 歌はん,
請ふ 君 我が爲に 耳を傾けて 聽け。
鐘鼓 饌玉 貴ぶに 足らず,
但だ 長醉を 願ひて 醒(さ)むるを 用ゐず。
古來 聖賢 皆 寂寞,
惟(た)だ 飮者の 其の名を 留むる 有るのみ。
陳王 昔時 平樂に宴し,
斗酒十千 歡謔(くゎんぎゃく)を 恣(ほしいまま)にす。
主人 何爲(なんす)れぞ 錢 少しと 言ふや,
徑(ただ)ちに 須(すべか)らく 沽(か)ひ取りて 君に對して酌(く)むべし。
五花の馬, 千金の裘(かはごろも)。
兒(じ)を 呼び 將(も)ち出(いだ)して 美酒に 換(か)へしめ,
爾(なんぢ)と 同(とも)に 銷(け)さん 萬古の愁(うれ)ひ。
酒飲みの心に響く、すてきな詩です。昔、漢詩が好きで、NHKの漢詩の番組を良く見ていました。漢詩って、中国語で朗読を聞くとまた味わいがあるのですよね。
明日は、大学での私の送別会で、花見をかねて屋形船に乗ります。女医さんから「何か希望はないですか?」と訊かれたので、「(みぐのすけ) 良いではないか、もそっと近う寄れ」「(女医さん) お代官さま、困ります。あ~れ~、(くるくるくる) きゃ~」というのがやってみたいと言ったら、思いっきり無視されました。
何はともあれ、楽しみです。