サクシン
純粋な医療ミスのようです。
解熱剤と間違え筋弛緩剤を投与、70歳男性患者が死亡…徳島
11月19日22時57分配信 読売新聞
徳島県鳴門市の健康保険鳴門病院で、肺気腫の疑いで入院していた男性患者(70)に、抗炎症剤ではなく、誤って名前の似ている筋弛緩(しかん)剤を点滴し、急性薬物中毒で死亡させていたことが19日、わかった。
病院側はミスを認めており、県警は業務上過失致死容疑で調べている。
病院や遺族によると、男性は今月17日夜に容体が急変し、体温が40度近くになった。当直の30歳代の女性医師は、抗炎症剤「サクシゾン」を出そうとしたが、データベースでヒットした筋弛緩剤「サクシン」をサクシゾンと思いこんだ。サクシンを受け取った看護師から「本当にサクシンでいいのですか?」との問い合わせがあったが、医師には「サクシゾン」と聞こえたため、「いいよ」と答えたという。
サクシンは、麻酔時や気管に管を挿入する際などに使用。使用を誤ると、呼吸停止を起こす場合がある。
30歳代の医師ですから、サクシンとサクシゾンが違うことを知らないことはあり得ず、コンピューターへの入力ミスだと思います。
電子カルテやオーダーリングシステムでは薬剤の最初の3文字を入れると薬剤の選択肢が表示されるので、「サクシ」と入れたときに誤ってサクシンを選んでしまったのだと思います。サクシンは筋弛緩薬でサクシゾンはステロイドです。
問題はいくつもあります。
①似た名前の薬剤が多い
例えば、抗癌剤のタキソールとタキソテールは電子カルテでは誤って入力される可能性があります。また、βブロッカーのアルマールと血糖降下薬のアマリールは名前が似ています。ややこしい薬名はジェネリック薬品の普及などで薬剤名の急激な増加と相まって、非常に増えています。今回のサクシンとサクシゾンも似てますね。
②危険な薬が簡単に出せる
その場で生命に直結する薬には、薬剤の冒頭に特殊な記号などを入力してからではないと出せないようにするべきです。抗癌剤、血糖降下薬、筋弛緩薬、静脈麻酔薬などが該当すると思います。
③気付いていたのに看護師が投与した
肺気腫の発熱に筋弛緩薬を投与することはありえません。死ぬとわかっていた筈です。医師に確認したそうですが、しつこく食いつくべきです。「どうして筋弛緩をかけるのですか?」とか。
緊張感がないとの指摘がありますが、この問題を精神論で片づけようとする人は、システムについての認識が足りないと思います。ミスというのは、思考のエアポケットやボタンの掛け違いで起こります。緊張感があればミスをしないのであれば、世の中からミスはほぼ駆逐できますが、それができないのが人間です。ミスをしようとしても出来ないシステムの構築こそが重要です。