リレンザ
以前紹介した、横田智之氏のサイトで、リレンザの開発についての話が書いてありました。時々、氏のサイトを訪れるのですが、本当に良い仕事をされた方だと思います。
楓梢庵日記 2006年の独り言
私はタミフル開発には関与していないが、一時期、リレンザの開発に関与したことがある。 リレンザは NA抑制剤としてタミフルよりも早く見つけられた薬剤である。 NA蛋白の X線による三次元構造解析により、NAの立体構造モデルを元に分子設計するという新しい手法によって合成された薬である。 1983年に Natureに合成の経緯と抗ウイルス活性を報告したオーストラリアの Von itzsteinらの論文は非常に注目された。タミフルを合成した研究者はノーベル賞をもらえないが、Von itzsteinはノーベル賞候補になっておかしくない。 私は彼が日本に来た時に親しく酒を酌み交わしたことがある。 リレンザはイギリスの製薬企業のグラクソ・スミスクラインで薬として市場に出された。 その後、この薬をまねて作られたのがタミフルである。 リレンザは水溶性に難があり、ヒトへは噴霧により直接ウイルスの増殖部位である気道、肺へ投与される。 一方、タミフルは経口薬として開発された。 副作用のことを考えるウイルス増殖部位にのみ投与する方が良いが、経口薬という手軽さが受けて、タミフルが市場では受け入れられている。
果たしてタミフルは H5N1に有効であろうか。 私はリレンザでヒト以外のインフルエンザウイルスを用いて抗ウイルス活性を測定したことがある。 それは馬インフルエンザウイルスを用いてである。 馬インフルエンザウイルスも時に大きな流行を起すことがある。 日本では 1971年に大きな流行があり、この年の 12月から翌年の 2月の東京での競馬レースにも大きな影響が出たほどである。 馬インフルエンザウイルスにはヒトと異なる H7N7、H3N8の二つの株が知られている。 リレンザはこの二つの馬インフルエンザウイルスの増殖をヒトのウイルスと同様に抑制した。 このことは NA抑制剤であるリレンザがヒトのインフルエンザウイルス以外の異なる N、Hタイプのウイルスも抑制することを示し、今流行している H5H1ウイルスにも有効性を示す可能性を示唆しているが、果たしてタミフルはどうなのであろうか。(060219記)
それにしても、リレンザが馬インフルエンザにも効くとはびっくりです。馬は体が大きいですから、どのくらいの量を使用するか考えただけでも大変そうですけどね。