偉人たちの死亡診断書

By , 2006年9月3日 2:05 PM

「偉人たちの死亡診断書(中原英臣、佐川峻著)」を読みましたが、内容に乏しい本です。診断の根拠に乏しく、医師が読むととうてい納得できません。根拠となる部分の引用もありません。

例えば、「信玄の病気については、当時、労咳と呼ばれていた肺結核といわれたり、あるいは隔病と呼ばれていた胃ガンともいわれている。『甲陽軍艦』の記述からみると、信玄の死因は胃ガンであったと思われる。」において、「甲陽軍艦」のどの部分の記述かは不明です。

他にも「その死因については、いろいろな説があるが、砒素による毒殺という説が有力のようだから、ナポレオンは砒素中毒で死んだということになる。」「もし、ナポレオンが本当に砒素で殺害されたとするなら、急性中毒ではなく慢性中毒だったはずだから」など、首をかしげるような論理の飛躍があります。

病気についてのあたりさわりのない解説が大部分を占めていますが、一般人向けだからでしょうか。でも、「○○だったとすれば○○だったことは確実だ」という部分においても、必ずしもそうではなかったり、抗生剤があれば肺炎で死ななくてすむとか、高血圧が容易に降圧剤でコントロール出来るとか、高血圧がコントロールされれば脳出血で死ぬことはなかったはずだとか、臨床医なら可能性としてしか示せないことも、かなり断定的に書いていて、嫌になります。

更に致命的な間違いを発見しました。「今では、脚気の原因がビタミンB2の欠乏であることくらい、小学生でも知っている。そのため、脚気は医学的には『ビタミンB2欠乏症』と呼ばれている。」という記述ですが、脚気はビタミンB1の欠乏で起こります。

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