ユビキチンがわかる
「ユビキチンがわかる (田中啓二編, 羊土社)」を読み終えました。こうした分野の特徴なのですが、理解すれば理解するほど謎が深まるというような・・・。
基本編ではユビキチンに関する基礎的知識が身に付きました。一方で、トピックス編はなかなか高度な内容でした。神経内科ではあまり癌を扱わないので、細胞周期やアポトーシスの話を理解するのはなかなか大変でした、というか理解できませんでした。
トピックス編の神経疾患に関する話では、アルツハイマー病におけるタウのユビキチン化、Parkinson病におけるα-シヌクレインとユビキチンの結合 (PARK1)、ユビキチンリガーゼである Parkinの異常(PARK2), ユビキチンヒドロラーゼ活性の低下や UCHL1のユビキチン63番目リジン (K63) へのリガーゼ活性 (PARK)、筋萎縮性側索硬化症におけるユビキチン化された SOD1, Dorfinなどの話が紹介されていて興味深かったです。ただ、神経疾患においては、一つのメカニズムだけではなかなか病気を説明しきれない点も多く、研究の余地はまだまだあります。ミトコンドリア修復におけるユビキチン・プロテアソーム系の話や、p62といった最先端の話は、まだ概念が確立していないためか、触れられていませんでした。数年後の教科書には載りそうです。こうしたメカニズムが明らかになり、神経疾患の根本的な治療法が生まれることを望んでいます。