12病院
久々の受け入れ不能症例の報道。骨盤骨折からの出血が死因となったようで、早く適切な処置できていれば・・・と悲しい気持ちになります。
さいたま 事故の車いす女性 12病院が受け入れ拒む
さいたま市南区の市道で先月二十九日午後、車いすの無職星野美穂さん(38)=同市見沼区=が乗用車にはねられ、約十六時間後に死亡した事故があり、埼玉県内の十二の病院が、救急搬送された星野さんの受け入れを拒否していたことが、同市消防局などへの取材で分かった。
同消防局によると、消防署員がさいたま、富士見、川口各市の病院に受け入れを打診したが、四つの病院が深夜で人手がないなどの理由で「処置できない」、八つの病院が「(外科医などがおらず)当直医が専門外」として、搬送を断った。十三カ所目の病院で受け入れが決まったが、運ばれたのは事故から約二時間半後の三十日未明だった。
同消防局救急課は「受け入れを断られても再度お願いするなど、搬送に問題はなかった」としており、今後、医師を含めて話し合い、死因との因果関係を調べるという。
事故は二十九日午後十時十分ごろ、さいたま市南区曲本二の市道で発生。星野さんが後ろから来た乗用車にはねられ、腰などを強く打ち、骨盤を折るなどして死亡した。
星野さんは幼いころから右足が不自由で車いすを使っていた。
さいたま周辺で受け入れを探したようです。
埼玉県は人口に対する医師の割合が全国最低クラスであり、患者数に対する医療リソースは不足しています (埼玉県知事は面積あたりの医師数という珍奇な概念で足りていると力説しているようですが)。さいたまから都内への搬送依頼は珍しくないくらいです。
別の記事によれば南区曲本での事故と書いてあり、場所は Google mapで確認できます。
実際に患者さんの怪我の様子がどうだったか、もう少しわかりそうな記事がありましたので、引用します。
12病院が拒否 搬送に2時間半 交通事故 38歳女性死亡
さいたま市で29日夜、車椅子で道路を横断中に乗用車にはねられ、約16時間後に搬送先の病院で死亡した女性が、12か所の病院に受け入れを断られ、搬送までに2時間半かかっていたことが明らかになった。市南消防署は「2時間半もかかったのは異例」として、死亡との因果関係について検証するとしている。
同署と浦和署によると、事故は同日午後10時15分頃に起き、救急車は同26分に到着した。はねられた同市見沼区、無職星野美穂さん(38)の頭部に腫れがあり、車椅子がゆがむなどしていたため、入院が必要と判断。病院に搬送することを決めたが、8病院は「専門医がいない」、4病院は「処置が困難」と断ったという。断ったある病院は「脳外科と整形外科にまたがるけがだったが、担当の医師がおらず、レントゲンなどを見ても詳しい状況の判断ができない可能性があった」と説明している。星野さんは30日午前0時55分、病院に搬送され、同日午後2時頃に死亡した。死因は腰の骨折による出血性ショックだった。
(2011年7月2日 読売新聞)
記事によると、病院側は「脳外科と整形外科にまたがるけが」と判断している訳で、少なくとも「頭部外傷+骨盤骨折」に対する処置が必要だったことが推測できます。
外傷性急性硬膜下 (or 硬膜外) 血腫、外傷性くも膜下出血などを起こしていれば脳外科医がいないと処置できませんし、骨盤骨折であれば整形外科医が必要です。また、骨盤骨折では場合によってはカテーテルで責任血管を詰めないといけませんから、放射線科医などが必要になる場合もあります。こうした科の医師がいないと対応が難しい上に、専門外の患者を診て病院が敗訴した訴訟も存在するので、一般の二次救急病院が受け入れてから対応していくということのハードルはかなり高いです。
拒否と断りの間
昔だったら、とりあえずどっかが取って輸液だけバンバン入れて、後送病院を探すという流れだったのが、入り口でシャットアウト。
どうしてこういう世知辛い世の中になったんでしょうねえ (棒
という言葉が、現状を表しています
。