抗体検査の話
神経疾患の中には、診断に抗体検査が大きな役割を示すものがあります。ギラン・バレー症候群の抗ガングリオシド抗体、視神経脊髄炎の抗アクアポリン4抗体、Isaacs症候群/Morvan症候群/抗 VGKC抗体陽性辺縁系脳炎の抗 VGKC抗体、重症筋無力症 (sero-negative) の抗 MuSK抗体、Lambert-Eaton myasthenic syndrome (LEMS) の抗 VGCC抗体、抗 NMDA抗体辺縁系脳炎での抗 NMDA抗体、橋本脳症での抗α-enolase抗体、傍腫瘍症候群での抗 Hu/Yo/Ri/Ma・・・抗体など。抗体が検出されれば診断の大きな裏付けになります。しかし、これらの抗体の多くは商用サービスでは測定出来ません。例外的に、傍腫瘍症候群の抗体は SRLという検査会社で受け付けていますが、かなり高額になります (私が以前提出したとき、抗 Hu/Yo/Ri/Ma・・・抗体は一つ数万円)。また、シノテストでは抗ガングリオシド抗体を受け付けていますが、抗ガングリオシド抗体の中でも測定出来るのは抗 GM1抗体と抗 GQ1b抗体のみです。
こうした抗体を測定しないでもある程度診断は可能ですが、やはり少しでも証拠を揃えて診断精度を高めたいですし、学会報告や論文発表の場合には、必ず抗体が陽性だったかどうかは突っ込まれるので、少なくとも大学病院クラスでは必要性の高い検査です。また、抗体と臨床症状の比較から、新しい知見が得られる可能性もあります。
では、神経内科医はどうしているかというと、研究機関に送っているのです。口コミで、「○○抗体なら△△大学」という情報が、出回っています。研究機関側からすれば全国からサンプルが集まりますし、臨床医からすればほぼ無料で検査して頂けることで、Win-Winの関係が作られます。しかし、この方法には欠点があります。一つは、研究機関はあくまで検査を研究のためにしているので、結果がどのくらいで戻ってくるかわからなかったり、申し込みの手間が煩雑だったりします。それに、研究目的ということは、研究者が研究をやめてしまえば、検査が出来なくなる可能性があります。
そんな中、コスミックコーポレーションの受託測定が面白いことを始めています。
①マイナーな検査も受け付けている
抗アクアポリン4抗体、抗VGCC抗体、抗NMDA抗体といった、これまで各研究機関に送っていた検査が可能です。ただし、学問的には、抗体の測定法で陽性率や陽性の意義が変わってくることがありますので注意が必要です。
②とにかく安い
Neurolineのサービスを見ると、非常に安いです。傍腫瘍症候群の抗体とか、目が点になる安さです。筋炎の抗体検査も充実しています (※この検査がどうかは確認していませんが、知り合いの先生から、安かろう悪かろうの検査には注意しなければならないということを教わりました)。
研究用なので診断に用いないでくださいとか、保険請求しないでくださいとは書いてありますが、そうではあっても神経内科医にとってかなり便利なサービスだと思います。(とはいえ、まだ使用したことがないので、実際に使用した方から意見が伺えると嬉しいです)