ALSの長期生存

By , 2014年1月29日 6:10 AM

ALSは予後の厳しい疾患ですが、10年以上経過しても ADLや呼吸機能がある程度保たれる方がいます。例えば、作曲家のショスタコーヴィチも進行の遅い ALSであったと推測されています。しかし、どのくらいの割合の患者が長生きし、それがどういう特徴をもった患者なのかは、まだ未知の部分が大きいのが現状です。

2014年1月2日の Annals of neurology誌に ALS患者の生存期間に関するコホート研究が掲載されました。

 Long-term survival of amyotrophic lateral sclerosis. A population-based study

 人口 4947554人が住む北イタリアにおいて、コホート研究を行った。ALS患者は 1998年1月1日~2002年12月31日に登録され、亡くなるか、もしくは 2013年2月28日まで前向きに観察された。その結果、517名が登録され、重複などを除く 496名が対象となったが、13名は追跡できず、483名を解析した。 男性 280名、女性 203名、18~93歳、平均 63.9歳で、診断時の平均罹病期間は 10.6ヶ月だった。登録時、definite ALS 44.1%, probable ALS 26.9%, possible ALS 19.3%, suspected ALS 9.7%だった。経過期間中、motor neuron diseaseとして 2名が PMA、1名が PLS 1名であることが明らかになり、また27名は ALSでないことが明らかになった。

 診断時から見た累積生存率は、12ヶ月 76.2%, 3年 38.3%, 5年 23.4%, 10年 11.8%だった。初発症状出現時から見た累積生存率は、12ヶ月 92.1%, 5年 28.6%, 10年 13.3%だった。男性、若年、possible/suspected ALS, spinal onset、診断まで 12ヶ月以上である方が長期に生存した。観察期間終了後に生存していた 41名のうち、胃瘻、非侵襲的換気 (NIV), 気管切開などを行っていたのは 7名 (17%) だった。75歳以上の男性患者では、10年間の生存率は一般人と変わらなかった。

 我々神経内科医が ALS患者に予後を説明するときなど、非常に役立つ研究だと思います。

今回の研究では遺伝子検索はしていませんが、例外を除き遺伝子型と表現型は相関がはっきりしないそうです。しかし、進行の遅い ALS患者で見られたという EPHA変異があるかどうかとか、個人的には遺伝学的背景も気になるところです。

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