teriflunomideと cladribine
2014年1月23日、Lancet neurology誌に、以前紹介した多発性硬化症 (MS) の経口薬 teriflunomideの第三相試験の結果が出たようです。
Oral teriflunomide for patients with relapsing multiple sclerosis (TOWER): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
18~55歳、EDSS 5.5以下の再発寛解型多発性硬化症患者 1169名に対して、placebo, teriflunomide 7 mg, 14 mgをそれぞれ割付け、主要エンドポイントを年間再発率として評価しました。年間再発率はプラセボ群 (0.50) の方が、teriflunomide群 (14 mg 0.32, 7 mg 0.39) より高いという結果でした。二次エンドポイントである障害の蓄積は、teriflunomide 14 mgでリスク減少がみられましたが、 7 mg群では placebo群と比較してリスク減少効果はみられませんでした。最も多い副作用は肝機能障害、脱毛、頭痛でした。4名の死亡がありましたが、薬剤との関連はないと判断されました。
個人的には、teriflunomide 14 mg群で腸結核を発症した患者がいること、 teriflunomide 14 mg群での死因が自殺、敗血症であること (論文では薬剤との因果関係はないと結論づけられている) ことは少し引っかかります。この手の薬は沢山開発されていて、どれも効果は大差ないように思うので、できるだけ副作用のない薬を選びたいものです。
2014年2月4日の Lancet neurology誌には、多発性硬化症の経口薬 cladribineの第三相試験の結果も出ていました。とはいっても、clinically isolated syndromeの段階での介入試験のようです。
Effect of oral cladribine on time to conversion to clinically definite multiple sclerosis in patients with a first demyelinating event (ORACLE MS): a phase 3 randomised trial
18~55歳、最初の脱髄イベントから 75日以内で、かつ臨床的に無症候性の病変 (3 mm以上) が 2個以上ある、EDSS 5点以下の患者 616名が対象でした。患者はそれぞれ cladribine 5.25 mg/kg, 3.5 mg/kg, placeboに割り付けられました。主要エンドポイントは 96週後に臨床的に確実な多発性硬化症 (clinically definite MS) になっているかどうかとしました。cladribineによるリスク減少 (ハザード比) は、cladribine 5.25 mg/kgで 0.38, 3.5 mg/kgで 0.33でした。副作用としては、cladribine群で placebo群と比較してリンパ球減少症がみられました。
多発性硬化症の経口薬は次から次へと開発が進んでいて、もう把握しきれないくらいです。いくつかの薬剤は、近いうちに日本に入ってくるものと思われます。患者さんにとって BESTの選択ができるように、論文を批判的にチェックしながら、使用可能になる日を待ちたいと思います。