Babinski反射の診断特性
Babinski反射は、神経内科医にとって最も興味をそそる身体所見の一つです。Babinskiが最初の報告をしてから 100年以上経過しますが、今なお謎に包まれた部分があり、近年においても多くの研究がなされています。
その中には面白い研究が多く、例えば脳死患者では、何故か Babinski反射が出ないそうです。
脳死では、Babinski反射陽性の患者はいなかった。足底反応としては、約半数が無反応型で、約半数が底屈型。
また、完全な脊損状態においても、Babinski反射が出るのは半分くらいらしいです (この論文は、昔医局の抄読会で紹介しました)。
The Occurrence of the Babinski sign in complete spinal cord injury (Journal of Neurology, 2010)
①脊髄が完全損傷された患者では、Babinski反射は半数くらい陽性になる
②Babinski反射と筋緊張の亢進には密接な関係がある
③バクロフェンの髄腔内投与により Babinski反射は抑制され筋緊張は低下する
④Babinski反射の消失は、筋緊張低下がなければ末梢神経障害が疑わしい。
上記 2つの研究のように、Babinski反射は出そうな病態でも結構出ないものだというのは神経内科医の肌感覚と合うものでして、多くの神経内科医は「器質的疾患で出ないこともあるけど、出れば異常」と捉えていると思います。
そして、2014年8月15日に Journal of Neurological Sciences誌に報告された研究はそれを裏付けるものでした。
錐体路障害に対する Babinski反射の感度は 50.8%で、特異度は 99%である
これは Babinski反射の診断特性を明らかにした素晴らしい研究だと思います。やはり、Babinski反射は感度はそれほど高くないけど特異度は非常に高いのですね。陰性でも錐体路障害を起こすような疾患の存在は否定できないものの、もし陽性であればそのような疾患を探すことが重要になります。
ただしこうした研究は、どういう状況でどういう患者を対象とするかで診断特性が大きく変わってくることが知られているので、その点は留意する必要があります。この研究が対象としているのは急性期の入院患者です。慢性期の患者ではもう少し感度が良くなるのではないかという印象を持ちますが、今後さまざまな clinical settingでの研究が出てくることを期待しています。
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(参考)