むずむず性器症候群
近年、むずむず脚症候群という疾患は巷でも広く知られるようになりました。
2014年10月6日に、JAMA neurologyに興味深い論文が published onlineとなりました。Parkinson病における Restless genital syndromeについてです。
Restless Genital Syndrome in Parkinson Disease
“Restless leg syndrome” が「むずむず脚症候群」だとすると、”Restless genital syndrome (RGS)” をそのまま訳すると「むずむず性器症候群」になります。私は初耳でしたが、論文の backgroundの部分に、命名の経緯が書いてありました。
2001年、Parkinson病ではない患者で持続性性喚起症 (syndrome of persistent sexual arousal) が報告されました。診断基準は、不本意な性的興奮が長期間 (数時間~数ヶ月) 続き、何度か絶頂に達しても解放されず、性的欲求とは関係なく起こり、煩わしくて迷惑で、ひどい苦痛と関連しているものです。2009年、18名の患者のうち 12名にむずむず脚症候群が先行/合併していることがわかり、”restless genital syndrome” という用語が用いられるようになりました。これまでクロナゼパム、オキサゼパム、トラマドール、抗鬱薬、エストロゲン、心理療法、経皮的神経刺激法、クリトリス切除術などが用いられましたが、治療成績は不良でした。
今回著者らが報告した症例は、過去にアカシジア、知覚過敏症、神経障害性疼痛、持続性性喚起症と診断されていました。著者らは、明らかな日内変動がある点、安静で症状が出現し動かすと楽になる点などから、むずむず性器症候群と診断しました。デュロキセチンは症状を悪化させ、オキサゼパムは一時的に有効でした。試しに、プラミペキソール 0.25 mgを夜間に使用したところ、症状は改善しました。著者らは、むずむず性器症候群がむずむず脚症候群の表現型の一つなのではないかと考えています。
なお、Vulvodiniaもむずむず性器症候群と根本的プロセスが同じであると推測され、むずむず性器症候群の用語に統一しようという提案がなされているそうです。
患者さんにとっては非常に辛い症状のようですが、プラミペキソールを試すと効く可能性があるというのは、朗報なのではないかと思います。ただし、プラミペキソールは性欲亢進の副作用が問題になる場合があるので、そこには注意が必要ですね。
ちなみに、プラミペキソールの性欲亢進については印象深い論文を読んだことがあります。ある男性がプラミペキソールを飲み始めてから性欲亢進を起こしてしまい、連日妻を押し倒すようになったそうです。しばらく御無沙汰だったため最初は喜んでいた妻も、次第に相手しきれなくなり、拒むようになったのですが、夫は「なしてや、なしてや」と求めてきます。そこで、妻は主治医に相談して内服をやめました。ところが、今度は妻の方が「味気ない」と訴え、自分で丁度良い投与量を決めるようになった・・・という話です。相当昔に読んだ論文なので、細部は忘れましたが、確か「神経内科」という雑誌の、2006年3月号かその付近の別の号だったと思います。