禁煙について
脳梗塞慢性期の患者の外来管理では、抗血小板薬 (血液をサラサラにする薬) の他に、リスクファクター (高血圧、脂質異常症、糖尿病、タバコなど) のコントロールを行わなければいけません。
禁煙は実際に困難なことが多いのが現状です。ところが、禁煙治療が保険診療で行えるようになっています。
そこで、自分が神経内科外来をしている病院で、呼吸器外来医に相談してみたのですが、保険適応外と言われてしまいました。
昔一緒に働いていた呼吸器の N先生に同じ質問をしたところ、大変勉強になる話を教えて頂いたので紹介します。
禁煙外来ですが、保険適応はどの医療機関でも可能なわけではなく、
①施設基準と②患者基準の双方のすべてを満たす必要があります。
一般に禁煙外来を従来から持っていたところには施設基準を満たしていないことがあるようです。
まず、施設基準については
1. 禁煙治療を行っている旨を医療機関内に掲示していること
2. 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること
3. 禁煙治療に係る専任の看護職員を1名以上配置していることと 呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること
4. 医療機関の構内が禁煙であること
が満たされている必要があります。
この場合、大学病院などでは病院内だけではなく、庭・大学 (教育施設)・附属研究施設のすべて (病院と同一の敷地にあるものすべて) で禁煙が徹底されている必要があります。
(つまり、たとえ屋外であっても喫煙所がある場合や灰皿が設置されている場合は施設基準を満たさないことになります。)
上記のような点から総合病院などの施設では禁煙外来を掲げているものの、自由診療を継続しているところも多いようです。
患者基準に関しては
1. ニコチン依存症と診断されていること (タバコ依存スクリーニングテストで5点以上)
2. ブリンクマン指数 (=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上
3. 標準治療プログラム (12週間で5回の受診が必要)に文書による同意を得ている
4. 外来患者 (入院中は不可)
5. 前回の禁煙指導から1年以上空いていること
が必要とされています。
これについては患者の自己申告によるものが大きいので基準は満たせると思います。
タバコ依存スクリーニングテストは以下のようなものです。
1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。
2. 禁煙や本数を減らそうと試みてできなかったことがありましたか。
3. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。
4. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
5. 上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。
6. 重い病気にかかって、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。
7. タバコのために健康問題が起きていることがわかっていても吸うことがありましたか。
8. タバコのために精神的問題が起きているとわかっていても吸うことがありましたか。
9. 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。
10. タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。
上記の質問で 「はい」を1点 「いいえ」を0点として計算
判定方法:10点満点のうち5点以上の場合、ICD-10診断によるタバコ依存症である可能性が高い(約 80%)
感度:ICD-10タバコ依存症の 95%が 5点以上を示す。 特異度:ICD-10タバコ依存症でない喫煙者の81%が4点以下を示す。 得点が高い者ほど禁煙成功の確率が低い傾向にある。
その他の医療機関についてはノバルティスが協賛している
http://www.e-kinen.jp/index.html
で調べてみてください。(施設基準が通っているかについても記載があります。)