視神経脊髄炎とリツキシマブ
神経の難病に抗がん剤治験 医師主導、世界初の承認目指す
産経新聞 11月5日(水)7時55分配信
難病の「視神経脊髄炎」に特定の抗がん剤が効くとして、国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)の田原将行医師(神経内科)が、患者に投与して効果を確かめる治験を進めている。視神経脊髄炎の医薬品として承認されれば、世界初となる見通し。副作用が知られた既存の医薬品を活用することで、安全性の高い治療法の確立につながることも期待される。
治験中の薬は抗がん剤「リツキシマブ」で、血液のがんといわれる悪性リンパ腫の治療薬。視神経脊髄炎に対しては日本だけでなく欧米でも未承認だが、効果を実証した臨床研究は複数あるという。
田原医師は、米国でリツキシマブを投与された視神経脊髄炎の患者に平成18年から、宇多野病院で投与を継続。この患者を含む6人への臨床研究を通じ、1回の点滴で約9カ月間、発症を抑えられることを突き止めた。
大学病院の教授らと研究チームを作り、国の科学研究費の助成を受けて今年6月に治験を開始。患者4人が協力しており、今後は40人を目標に患者を集める。データを分析して効果が確認されれば、視神経脊髄炎の治療薬として承認を目指す。
田原医師は、「再発を心配して暮らす慢性期の患者さんが、生活の質を向上させられる予防薬になる。視神経脊髄炎の治療法がダイナミックに変わる可能性も秘めている」と話している。
約 1週間前にニュースで取り上げられた視神経脊髄炎に対するリツキシマブですが、日本でも臨床試験が始まるんですね。未承認とはいえ、日本の診療ガイドラインで紹介されているくらいの治療法で、効果もアザチオンプリンなど一般的な免疫抑制剤と比較して強いとされています。高額な上に保険適応がないので、日本では視神経脊髄炎にはほとんど使われていませんが、こうした臨床試験を通して、保険適応となれば良いですね。
さて、リツキシマブは Wegener肉芽腫症や顕微鏡的多発血管炎では公知申請により保険適応になっているようです。いくつかの臨床研究もありますし、視神経脊髄炎でも公知申請をしてみては・・・と思いましたが、現状では難しいのでしょうか。
少し話は逸れますが、なんとタイムリーなことに 2014年11月6日に公開された New England Journal of Medicineの論文のタイトルが、”Rituximab versus Azathioprine for Maintenance in ANCA-Associated Vasculitis” でした。リツキシマブの方がアザチオプリンより ANCA関連血管炎に対する寛解維持効果が強かったそうです。血管炎は末梢神経障害などを起こしますし、神経内科でリツキシマブを使う機会も、今後増えてくるのではないかと思います。