Painful and painless channelopathies
Lancet Neurologyに掲載されていた、疼痛に関する遺伝子異常についての論文 (2014年5月7日 published online) を読みました。
Painful and painless channelopathies.
感覚神経に発現しているリガンド結合型及び電位依存性イオンチャネルの異常により、痛覚を感じなくなったり、痛覚過敏や自発痛を起こすことが近年わかってきて、その原因遺伝子がいくつか同定されています。この論文には、現在わかっている遺伝子と表現型をまとめた表が掲載されていて、わかりやすいです。
こうした channelopathyの中で、神経内科医が一番見かけることが多いのは、small-fiber neuropathyだと思います。原因不明の small-fiber neuropathyにおいて、Na(v) 1.7 channelのミスセンス変異 (チャネルの開閉が障害されて gain-of-functionとなる) が 30%にも上るということがこの総説に書いてあってびっくりしました (引用論文はこちら)。その他、Na(v)1.8 channelの異常でも small fiber neuropathyを発症することがあるようです。治療には、ガバペンチンやカルバマゼピンといった抗てんかん薬やメキシチレンを用いることが多いですが、それぞれの原因と考えられるチャネルへの antagonistの開発も進んでいるようでした。
もう一点興味深かったのは、こうした遺伝子の多型が、疼痛の感受性の個人差に影響しているかもしれないというものです。慢性疼痛を引き起こす様々な疾患で、痛みの感じ方と遺伝子多型の関係が調べられています。関連がありそうだとする多くの報告があるものの、その効果はあまり大きくなさそうだということです。
この分野は、最近 10年くらいで研究がめざましく進歩しており、勉強になる総説でした。