ワーグナーと片頭痛
2013年のクリスマスBMJにワーグナーの頭痛についての論文が掲載されていると紹介しました。
クリスマスBMJ ワーグナー
2014年10月号の Cephalalgia誌に、同じ著者達がより詳細な検討を加えた論文を発表しました。
Phenotype of migraine headache and migraine aura of Richard Wagner.
著者は 3人とも名字が Göbelですが、一家で書いた論文なのでしょうか。
この論文では、ワーグナーの家族歴が示され、どうやら母、ワーグナー、その子どもと 3世代に渡って頭痛持ちだったようです。片頭痛は家族歴があることが多いので、納得ですね。ワーグナーの 2番めの妻コジマ (リストの娘) は日記をつけており、そこには家族全員の健康状態、頭痛についてが詳細に綴られていました (論文 table 1に一覧表あり)。そして、どうやらコジマ自身も片頭痛でした。
論文によると、ワーグナーの頭痛の記載は 28歳から 67歳に渡って存在し、発症時期は片頭痛として矛盾しません。また、ワーグナーには視覚前兆もあったようです。著者らは、ワーグナーの頭痛が、国際頭痛分類3β版における「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の診断基準をそれぞれ満たすとしています。
ワーグナーのオペラ「ジークフリート」には片頭痛を思わせる描写が登場し、その作曲時点でワーグナーは頭痛に苛まれていたといいます。疾患が作品に影響を与えることがあるのですね。こういう知識を持ってオペラをみるのも感慨深いものです。