rt-PAと症候性脳出血

By , 2015年11月21日 9:51 PM

最近、定期購読している JAMA neurology誌に血栓溶解療法 rt-PAと症候性脳出血について 2本ほど論文が掲載されていました。興味深い内容だったのでさわりだけ紹介します。

Treatment and Outcome of Thrombolysis-Related Hemorrhage

脳梗塞発症 4.5時間以内に血栓溶解療法が行われた患者 3894名のうち、3.3%に症候性の頭蓋内出血がみられた。血栓溶解療法が行われた時間の中央値は 470分で、症候性頭蓋内出血が診断された時間の中央値は 112分だった。院内死亡率は 52.8%で、26.8%に 33%以上の血腫拡大があった。血小板輸血や低フィブリノゲン血症が血腫拡大と相関していた。いかなる治療 (評価項目:Vitamin K, Cryoprecipitate, Aminocapronic acid, Fresh frozen plasma, Prothrombin complex concentrate, Recombinant factor VIIa, Plantelet transfusion, Surgical decompressive craniotomy or hematoma evacuation, Any treatment) も生命予後を改善しなかった。(2015年10月26日 published online)

症候性脳出血の発症率は先行研究より少ないですが、死亡率が約 50%というのは他の報告とほぼ一緒の結果ですね。一回出血してしまうと、何をしても厳しいようです。

Risks and Benefits Associated With Prestroke Antiplatelet Therapy Among Patients With Acute Ischemic Stroke Treated With Intravenous Tissue Plasminogen Activator

血栓溶解療法を受けた 85072名のうち、45.7%が治療前に抗血小板薬を内服していた。交絡因子を調整した後、血栓溶解療法前に抗血小板薬を内服していた患者が症候性脳出血を起こすリスクは、内服していない患者と比べて有意に高かった (adjusted odds ratio [AOR], 1.18 [95% CI, 1.10-1.28]; absolute difference, +0.68% [95% CI, 0.36%-1.01%]; number needed to harm [NNH], 147)。最もリスクが高かったのは、アスピリン単独と (AOR, 1.19 [1.06- 1.34]; absolute difference [95% CI], +0.68% [0.21%-1.20%]; NNH, 147) とアスピリン+クロピドグレル併用療法 (AOR, 1.47 [1.16-1.86]; absolute difference, +1.67% [0.58%-3.00%]; NNH, 60) だった。院内死亡については、抗血小板薬内服の有無で有意差はなかった。しかしながら、抗血小板薬の内服は、交絡因子を調整すると、自立歩行 (42.1% vs 46.6%; AOR, 1.13 [1.08-1.17]; absolute difference, +2.23% [1.55%-2.92%]; number needed to treat, 43) や退院時の機能予後 (退院時の mRS 0-1: 障害がない) (24.1% vs 27.8%; AOR, 1.14; 1.07-1.22; absolute difference, +1.99% [0.78%-3.22%]; number needed to treat, 50) という点で優れていた。(2015年11月9日 published online)

以前、同僚と下記のような議論を同僚としたことがあります。

「抗血小板薬の効果は切れるのに数日かかるので、脳梗塞発症前に抗血小板薬を飲んでいた患者の場合、その効果が持続した状態で血栓溶解療法が行われる。これは、血栓溶解療法後と同時に血小板薬を投与するのと違わないんじゃないか?ガイドラインでは血栓溶解療法を行ったあとに 24時間以内は抗血小板薬を投与しないことになっているけどね・・・。」

今回の研究を見ると、やはり抗血小板薬は血栓溶解療法における症候性出血の増加と関連があったのですね。一方で、抗血小板薬が入っていた方が、機能予後としては良いというのは驚きでした。

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