医師もMRも幸せにする患者のための情報吟味

By , 2016年4月6日 8:54 AM

医師もMRも幸せにする患者のための情報吟味 ディオバン事件以降の臨床研究リテラシー (山崎力, SCICUS)」を読み終えました。

「”spin (ねじ曲げられた報告)” をどう見ぬくか、読み解くか」「製薬会社とのつきあい方」などがテーマです。過去に山崎先生の本を読んで面白かったことや、彼の講演に感銘を受けたことがあり購入しました。素晴らしい本でした。

まず、本書ではさまざまな実例を使い、spinの見破り方をわかりやすく解説しています。これは、論文や MRからの情報提供をきちんと精査し、患者さんに最大限の利益をもたらすために知っておくべき知識だと思います。

後半は、製薬会社とのつきあい方についてです。大規模臨床研究には膨大な資金が必要ですが、日本では製薬会社以外から資金援助を受けることがほとんどできません。そのため、製薬会社といかに協力して研究を進めていくかが大事になってきます。本書には、win-winの関係を築き、研究結果の中立性を保つためのノウハウが書いてあります。

巻末は対談です。特に問題と感じたのが、データ入力のエラー率についてです。なんと、単純な手入力で 1万回打ち込めば平均 960回 (9.6%) 間違うというデータがあるそうです。研究の精度を高めるために、エラーを減らすいくつかの方法が紹介されています。年金記録で行われているのはおそらくシングルエントリーで、ある研究によると 1万回入力すると平均 26回間違うとのことでした。年金記録の管理は、この点からも難しい問題なのだと思いました。

最後に、本書とは関係ありませんが、”Association of American Medical Colleges (AAMC)” が作成した、医療関連企業による医学教育への資金提供に関する文章の日本語訳を付記しておきます。「この翻訳プロジェクトは、一般臨床、医学教育の場における利益相反の議論を、今後、我が国で広く展開していくための参考資料とすることを目的としている」そうです。

“医療関連企業による医学教育への資金提供 AAMC作業部会の報告書” 

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy