しゃっくり
「しゃっくり」は医学的には吃逆といいます。
吃逆について、「神経内科」という雑誌で面白い論文がありました。
神経内科では、多発性硬化症や脳幹梗塞などで、しつこい吃逆への対応を迫られることあります。これまで私はクロナゼパムなどを処方していたのですが、より優れた治療法が紹介されていました。面白い論文なので、是非原著を読んでみてください。日本語ですし、すぐに読めます。
以下、「逸見祥司, 砂田芳秀. 吃逆. 神経内科 66: 152-157, 2007」より抜粋して紹介します。
吃逆は「横隔膜の収縮と同期して声門が閉鎖する反射運動の一つ」と考えられており、「声門の閉鎖は横隔膜の収縮による吸気運動の開始から35msec以内に始まり、最大1秒持続する」ことが知られています。吃逆の中枢は延髄網様体にあるとされています。
神経内科医が良く目にするのは、中枢性の吃逆で、延髄の多発性硬化症や脳梗塞などですが、中枢性吃逆には他に代謝性や薬剤性などがあります。薬剤性の吃逆としてαメチルドパ、バルビツレート、デキサメサゾン、ジアゼパム、プラミペキソール、ペルゴリドなどの報告があるそうです。また、中枢性に対して末梢性吃逆も知られおり、吃逆の反射弓の求心路や遠心路の障害で起こると考えられています。
論文では実際の治療としては、身体刺激療法、薬物療法、神経ブロックが紹介されていました。身体刺激治療は民間療法とさして変わりません。舌牽引、外耳道圧迫、炭酸飲料を飲む、眼球圧迫、頸動脈洞圧迫などです。薬物療法としては、バクロフェン(15-45mg/day)が第一選択とされています。有効率が95%とする報告もあるようで、実験的にも確立しています。わたしが良く使用するクロナゼパムも一つの選択肢として認められていました。抗てんかん薬ではバルプロ酸やdiphenylhydantoinも効果があるようです。巷で良くジアゼパムを処方するのを見かけますが、ジアゼパムで吃逆を誘発した報告があり、適当ではないようです。
これまでは、クロナゼパムで困ったことはないのですが、バクロフェン内服も検討してみたいと思います。
郡山時代のボスに、「柿のへた」を煎じて飲むのが有効だとする民間療法を聞いたことがありますが、文献には紹介されていませんでした。