COVID-19とGuillain-Barre症候群/Fisher症候群②
2020年5月2日に書いたCOVID-19とGuillain-Barre症候群/Fisher症候群の続きです。
①COVID-19 presenting with ophthalmoparesis from cranial nerve palsy. (Neurology. 5.1 published online)
症例1: 36歳男性、先天性の斜視の既往がある。左眼瞼下垂、複視、両側下肢遠位の感覚障害が出現した。4日前に熱っぽさ、咳、筋痛があり、それらは改善していた。診察では、左散瞳、軽度の眼瞼下垂、内転および下転制限があり、部分的な左眼球運動麻痺の所見だった。外転制限は両側性で、両側外転神経麻痺に合致していた。下肢腱反射低下、感覚鈍麻、歩行失調がみられた。鼻スワブでSARS-CoV-2陽性だった。MRIでは左動眼神経に造影効果、T2強調像高信号、腫大がみられた。Miller Fisher症候群を疑われて免疫グロブリン大量投与 (2 g/kg 3日間) を投与され、またヒドロキシクロロキンが用いられた。症状は入院3日後の退院前に部分的に改善していた。抗ガングリオシド抗体は陰性だった。
症例2: 71歳女性、高血圧症の既往がある。2日前の起床時に疼痛を伴わない複視と、右眼の外転困難が出現した。視力、瞳孔、眼底には異常がなかった。彼女は数日続く咳と発熱があることを述べた。救急外来では、発熱と低酸素血症があった。髄液検査は正常だった。MRIでは視神経鞘とTenon嚢後部の造影効果がみられた。胸部画像では、両側に陰影があった。鼻スワブでのSAR-CoV-2 PCRが陽性だった。COVID-19肺炎はヒドロキシクロロキンで治療した。外転麻痺は入院6日後の退院までには大きな改善はなかった。退院2週間後の電話での聞き取りでは、徐々に良くなっているとのことだった。
症例1について著者らも考察している通り、Guillain-Barre症候群やFisher症候群の可能性はあるけれど、感染から発症まで数日しかないので、ウイルスの直接浸潤の可能性も残る所です。
②Guillain-Barre syndrome during SARS-CoV-2 pandemic: a case report and review of recent literature. (J Peripher Nerv Syst. 2020.5.10 published online)
症例:54歳女性、特記すべき既往歴なし。2020年4月に急性、近位筋に目立つ、中等度の対称性麻痺 (MRC 下肢近位筋3/5、遠位筋4/5) で入院した。腱反射消失、四肢しびれ感やチクチク感も伴っていた。これらの症状は口腔咽頭のCOVID-19 RT-PCR陽性の3週間後から始まり、入院の時点で既に10日間進行していた。RT-PCRは濃厚接触者として行われたものだった。彼女は発熱や呼吸器、消化器症状はなかったが、Guillai-Barre症候群の症状が出る2周間前に、一過性の嗅覚、味覚障害を自覚していた。mEGOSは入院時3/9, 入院7日目に1/12だったため、予後が良好であることを示していた。新たに行った鼻咽頭のウイルス検査は陰性だった。髄液は細胞数正常、蛋白 140 g/lと蛋白細胞解離を認めた。入院時の神経伝導検査では、遠位潜時の著明な延長と、両総腓骨神経CMAPのtemporal dispersionを認めた。脛骨神経刺激で、両側に複合A波はあったがF波潜時は正常だった。その他の神経は正常だった。筋電図では、脱神経電位はなかった。AIDPと診断した。入院2日後に、四肢筋力低下の悪化があり、嚥下障害も訴えた。免疫グロブリン大量投与を受け、ほぼ完全に回復した。入院14日後に電気生理検査を再検したが、前回と著変はなかった。
典型的なGuillain-Barre症候群と思います。既報と比べて特記すべきことはありません。抗ガングリオシド抗体はどうだったのでしょうね。それほど頻度が高いわけではないでしょうが、Guillain-Barre症候群の報告は珍しくなくなてきた気がします。